菅野、3242球に詰まった超一流の技術…3冠、ノーヒットノーラン

スポーツ報知
ノーヒットノーランを達成し、バンザイをして喜ぶ菅野

 巨人・菅野智之投手(29)は14日のクライマックスシリーズ第1ステージ第2戦ヤクルト戦(神宮)でポストシーズン史上初のノーヒットノーランを達成した。

 7回2死から山田哲に四球を与えるまで完全試合。9回無安打1四球の準完全試合でチームは4―0で勝った。9月下旬から2登板連続の中5日で3連続完封、中4日でリリーフ登板、そこから中4日というフル回転で臨んだ一戦で球史に残る快投。CS最終S進出が決まった試合後、神宮最終戦となる由伸監督へのスタンドからの「ヨシノブコール」と、エースへの「スガノコール」の大歓声。今年の由伸巨人のベストゲームとも言える試合だった。

 この試合で菅野が投じた球数は113球。試合後には「完全試合をしても絶対に課題は生まれると思いますし、きょうも小さい反省点はいっぱいあります」と話していた。後日、菅野に納得できる完璧な球は何球あったか聞くと「10球くらいだと思います」。あれほど完璧な投球でも、自分の中で100点と言える球は10%なかったという。

 捕手の小林も、同学年の菅野の快挙を喜んだ。7回先頭の坂口が一邪飛を打ち上げるとミットを強くたたき、7回2死一塁からバレンティンを外角スライダーで空振り三振に抑えると、右拳を握りガッツポーズ。試合終了直後はマウンドで菅野と跳びはねて抱き合った。「緊迫した中で自分をコントロールして落ち着いて投げることはさすがだなと思います」とエースをたたえた姿が印象的だった。

 小林に後日、菅野があの試合で納得できる球は何球くらいあったと思うか、聞いてみた。「どれぐらいですかね」と思い返しながら考え「10球くらいじゃないですか」。菅野の答えと一致した。日頃から連係を密に取り、情報共有するバッテリー。マスク越しの意思疎通も完璧だった。

 普段の試合、菅野は1試合で本当に納得できる完璧な球は1、2球くらいで、多くても5球くらいだという。プロ野球という厳しいハイレベルな世界で、それほど紙一重の、しびれる勝負を毎試合している。どれだけ実績を残しても、向上心が尽きることはない。

 今年はレギュラーシーズン28登板で202イニングを投げて10完投8完封、15勝8敗、防御率2・14、200奪三振。沢村賞の選考基準7項目を全てクリアして最多勝、最優秀防御率、最多奪三振の「投手3冠」に輝いた。トータルの球数は3129球。1イニング平均15・49球はセ・リーグの規定投球回以上の投手で最も少なかった。

 菅野にこのことを聞くと「よく1イニング15球で9回135球と言いますが、自分の場合は115球が理想です」と話していた。今年のセ・リーグは打率3割以上が15人など近年まれにみる「打高投低」の年。さらに相手は菅野と対戦時、球数を投げさせようとファウルで粘る作戦を取るチームもある。そんな中、誰よりも少ない球数で投げきったのは、抜群の制球力や投球術があるからだろう。12球団最多の202イニングを投げて、四球はリーグ最少の37。上原以来史上2人目となる、通算2度目の「最少与四死球での奪三振王」にもなった。

 今年はレギュラーシーズンの3129球とCS113球の計3242球を投じた。その中に詰まっている超一流の技術。現状に満足せず、常に高いレベルを求めて進化を続ける絶対エース。貪欲な姿勢の積み重ねが、球史に残る10月14日・神宮の113球ノーヒットノーランにつながった。

 (巨人担当・片岡優帆)

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