【巨人】次女・三奈さん、長嶋終身名誉監督の重病説一蹴「自分で自分の体を治しちゃった」83歳誕生日

スポーツ報知
2013年5月5日、東京ドームで行われた国民栄誉賞授与式での始球式直前、控室で次女・三奈さん(左)と記念撮影する長嶋さん

 巨人・長嶋茂雄終身名誉監督=報知新聞社客員=が20日、83歳の誕生日を迎えた。昨年7月に胆石のため入院、12月中旬に退院後も治療とリハビリを続けているミスター。一時は重病説も流れ、ファンの心配は募ったが、スポーツ報知は次女・三奈さんを直撃。三奈さんは長嶋さんの現状とともに、今月初旬には内視鏡手術を寸前で回避する奇跡的な出来事があったことも明かした。“メークミラクル”を起こした長嶋さんは改めて、V奪回を目指す巨人へ熱いメッセージを口にした。(取材・構成=谷口隆俊)

 桜の花よりひと足早く、ファンの笑顔が満開となる“ニュース”が届けられた。胆石のため、半年近くも入院していた長嶋さん。三奈さんによれば病気と闘いながらも、野球のことを考えない日はなかったという。

 「これまで巨人軍はいかなる時も“紳士たれ”と言われてきた。しかし、今年に限っては、投手野手が一丸となって一生懸命、がむしゃらに、取り組んでやっていってほしい。いったんグラウンドに入ったら、きれいなプレーをする必要はない。グラウンドでは紳士でなくていい」

 ミスターに今季の巨人へのメッセージをお願いしたところ、10分以上も真剣に考えてから紡いだ言葉。ただ貪欲に勝利を求め、そして勝て―。言葉から衰えぬ闘志を感じ取り、三奈さんは笑った。

 「『紳士たれ』でなくていいなんて、父しか言えないかもしれませんね」

 三奈さんによると、ミスターが腹部に異変を感じたのは昨年春。痛みが増した7月、胆石【注1】と診断され、入院した。石の一部が流れ落ちる途中で詰まり、胆管の出口付近をふさいで、胆汁が流れない状態だった。

 「内視鏡でも胆石を取る手術は体に負担がかかる。除去は体力の回復を待ち、投薬と、胆汁を流すために7センチほどのプラスチック製医療器具であるステント【注2】を内視鏡手術で入れました」

 胆石治療の薬は強いもので、時には他の臓器にも影響。落ちた筋力を取り戻すリハビリもあり、退院までに半年を要した。

 「猛暑だったし、この機会に全身を調べてもらいました」

 今月初めにはステントを交換するため、再び病院へ。麻酔をかけ、内視鏡を腹部に入れたところで担当医が驚いた。「長嶋さんの体の中にステントがない」―。造影剤を入れて詳しく調べても見つからない。

 「退院時の検査では、ステントは残っていた。変な所に詰まっちゃったのかなと一瞬、ドキッとした」

 どうやら、ステントも詰まっていた胆石も、胆汁に流され、腸を回って体外に排出されてしまったようなのだ。三奈さんには思い当たるフシがある。退院後、食事制限のない長嶋さんは、好きな肉をたくさん食べた。

 「肉を食べると胆汁がたくさん作り出されるそうです。父はすき焼きが好物で、週に何度も食べていました。昼から食べる日も(笑い)。好きなお肉をいっぱい食べて、胆汁があふれ出ちゃったのかも…」

 大胆な仮説だが、担当医も「詰まっていた胆石がステントに当たって細かくなり、胆汁が一緒に押し流したのではないか」などと推察した。

 「麻酔して入れた物が、体内を移動したら痛いはず。でも、父は『痛くない』と。『本当に(ステントを入れる)治療、したの?』とまで言う。父は見事に自分で自分の体を治しちゃった。内視鏡を入れて手術を始めようとした、その時です。こんなうれしい“ドタキャン”はない。夏頃に予定していた残りの石の内視鏡除去手術もなくなりました。みんなで笑い、喜びました。『メークミラクルだ~』って」

 ただ、脳梗塞治療は続いており、血流を良くする薬を使っていることから、小さな傷でも治りは遅い。胃カメラなどの検査前に食事を控えれば、脱水の危険性も出る。入院中は検査でさえ苦痛だろうが、長嶋さんは「つらい」とは言わない。声をひそめて「先生たちが頑張ってくれるから、俺も頑張るよ、三奈ちゃん」と伝えてきたそうだ。

 「04年に倒れてから、今なお闘病中なんです。今回、時間をかけて治療したことで退院が延びて、実は重大な病気なのではと心配された方もおられたと思います。完全に治ったわけではなく、経過観察と定期的な検査を続け、筋力も徐々に戻さないと。今は一人でトレーニングしています。父は頑張っているので、温かく見守っていただければ。応援してくださる方の思いを誰よりも感じていますし、ファンの方に会える日を楽しみにしています。皆さんが待っていてくださる限り、父は絶対にあきらめません」

 ミスターにとって、ファンと再会する希望こそが、明日への活力となっている。

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