悲願の初V香妻琴乃、不調でゴルフ一時嫌いに 父「やけ酒を飲むこともあった。多い時はハイボール20杯」

スポーツ報知
ツアー初優勝を果たし笑顔で優勝杯を掲げるた香妻琴乃

◆女子プロゴルフツアーマンシングウェアレディース東海クラシック最終日(16日、愛知・新南愛知CC美浜C=6446ヤード、パー72)

 10位から出た美人プロ香妻琴乃(26)=サマンサタバサ=が8バーディー、ボギーなしの64で回り、通算15アンダーとしてプロ8年目でツアー初優勝を飾った。1打差2位に新垣比菜(19)=ダイキン工業=、岡山絵里(22)=ニトリ=、イ・ミニョン(26)=Q CELLS=、アン・ソンジュ(31)=モスバーガー=が続く大混戦を制し、感激の涙を流した。昨季賞金女王の鈴木愛(24)=セールスフォース=とアマチュアの安田祐香(17)=兵庫・滝川二高3年=は3打差の6位だった。首位から出た中国の美人プロ、セキ・ユウティン(20)=MEDIHEAL=は17番でトリプルボギーをたたくなど終盤に崩れ、15位に終わった。

 26歳の美人プロは攻めに攻めた。香妻はスタートから1、3、5、7、9、11番と奇数ホールすべてでバーディーを奪う快進撃。12番で初の偶数ホールバーディーを決めたが、その後、スコアは止まった。正念場の最終18番パー4で勝利への執念を見せた。右ラフ残り121ヤードからの第2打をピン右2・5メートルへ。フックラインのバーディーパットをしぶとく沈めた。

 64のビッグスコアをたたき出した香妻は単独首位でホールアウトしても集中力を切らさなかった。プレーオフで再び想定されるフックラインをイメージして練習グリーンで静かにボールを転がした。ホールアウトから約40分後。アン・ソンジュのバーディーパットが外れ、初Vの朗報が届くと、初めて緊張の糸と涙腺が緩んだ。

 松村卓キャディー(45)に「ゴルフを続けていて良かったね」と祝福されると、うれし泣きした。スランプ、腰痛、体重増…これまでの試練が脳裏に浮かび、大粒の涙が流れた。

 「ゴルフが嫌いになった時もあった。昨年は(ツアー優先出場権を争う)3次予選会で失敗して、試合に出られないし、7社もいるスポンサーさんにも申し訳ないし。それでも、どんなに成績が悪くても18ホールを歩いて応援してくれるファンがたくさんいた。優勝しても泣くつもりはなかったんですけど、キャディーさんの言葉で泣いてしまいました。プロ8年目でやっと優勝できました」

 3歳からゴルフを始め、ツアー23勝の横峯さくら(32)=エプソン=の父・良郎氏(58)が主宰する「めだかクラブ」で、姉貴分のさくら、同学年の出水田大二郎(25)=TOSS=、弟の陣一朗(24)らと腕を磨いた。2011年、プロテストに一発合格。14年にはサマンサタバサレディース、ミズノクラシックでプレーオフ惜敗と初優勝まであと一歩に迫った。賞金ランクは19位に躍進し、初の賞金シードを獲得した。しかし、好事魔多し。順風満帆の同時期に長いトンネルに突入した。

 絶好調だった14年の秋に腰痛を発症。「寝返りするときも痛いくらいだった」。パットも不調に陥り、16、17年は賞金シードを逃した。今季もここまで賞金ランク84位と苦しんでいた。愛らしいルックスが人気の理由のひとつでもあったが、体重は4キロ増え「太った、と言われることも多かった」と振り返る。ツアーに帯同する父・尚樹さん(54)は「2人でやけ酒を飲むこともあった。多い時はハイボール20杯くらい飲んだ」と話す。

 どん底の香妻を救ったのは、父とファンの応援だった。

 尚樹さんは「ゴルフが悪くても命まで取られない」と常に前向きに話しかけた。香妻は増えた体重を落とすため「週に2~3回食べていた」というほど大好物のトンカツを約2か月間、絶っていたが、昨夜(15日)、父は「カレーハウスCoCo壱番屋」であえてカツカレーを注文。「半分、食べな」とすすめた。ストイックな娘の心をほぐし、カツで「勝つ」を呼び込んだ。

 熱狂的、かつ研究熱心な一部のファンも香妻の力になった。好調時と不調時のパットの違いを尚樹さんを通じて指摘。「悪いときは体とボールが離れていた。ボールと体を近づけて背筋を使ってストロークするとパットがよくなった」と香妻は明かした。

 この日、最後まで攻撃的なゴルフを貫き、初優勝をもぎ取った裏には、出水田の存在があった。幼なじみはRIZAP KBCオーガスタ(8月23~26日)でツアー初優勝。「テレビの前で応援していた。解説の方は『難しい17番はパーでしのいで、18番で勝負』と言っていましたが、大二郎は17番でバーディーを取って勝負を決めた。攻撃的なゴルフがすごく印象に残った。きょう、私はパーでいい、と思ったホールはひとつもない。攻撃的なゴルフができました」。香妻は幼なじみをファーストネームで呼びながら、うれしそうに話した。

 小学生時代、めだかクラブでゴルフの練習だけではなく、川で泳いだり、木に登ったり、ほぼ毎日、一緒に過ごした。その2人が1か月弱の間で、ともにツアー初優勝。「1週間前に今晩は大二郎とご飯を食べることになっていた。お互いの優勝祝いになりました。おごってもらいますよ」と笑った。

 ゴルフを始めて23年。「優勝する日が来たというのがすごくうれしい」。一時は嫌いになったゴルフがもっと好きになった。

 ◆香妻 琴乃(こうづま・ことの)1992年4月17日、鹿児島・鹿屋市生まれ。26歳。3歳からゴルフを始める。2011年、宮崎・日章学園高を卒業後、同年8月のプロテストに一発合格。14年、賞金ランク19位に躍進し、初の賞金シードを獲得。その後、伸び悩み、16、17年は賞金シードを逃した。今季もここまで賞金ランク84位と低迷していたが、今回の優勝で3年ぶりのシードを決めた。趣味は音楽鑑賞、ヨガ。157センチ、51キロ。

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