稲森佑貴、メジャーで初V “日本一曲がらない男”が善戦と安定の殻破る

スポーツ報知
優勝杯を掲げ笑顔の稲森

◆男子プロゴルフツアー国内メジャー第3戦日本オープン最終日(14日、神奈川・横浜CC=7257ヤード、パー71)

 プロ8年目の稲森佑貴(24)=が5バーディー、2ボギー、68の通算14アンダーで逃げ切り、ツアー初優勝をメジャーで飾った。この日3人だけのフェアウェーキープ率100%を達成した“日本一曲がらない男”が、ゴルファー日本一を決める試合で頂点に立った。初優勝が日本オープンの例は2009年王者で同じ鹿児島出身・小田龍一以来8人目。5年シードと来年の海外メジャー、全英オープン出場権を獲得した。

 高校2年でプロ入りした稲森の、苦節8年の思いが右拳に凝縮された。18番で短いボギーパットを決めると「優勝したら大きなガッツポーズをしようと思っていた。あれができるのは気持ちいい」と感慨に浸った。涙は出なかった。5番のボギーで後続に1打差に迫られたが、9番で約10メートルのバーディーパットを沈めると、後半に3つ伸ばし唯一、4日間60台で回った。

 14年に初シード獲得も、これまでトップ10が21回と善戦止まりだった。約1か月半前、6歳でゴルフに導いた父・兼隆さん(67)に「メジャーを勝つしかない。日本オープンを勝て」とハッパをかけられた。時松、秋吉、出水田…。自身より後にシードを取った九州出身で同年代の選手たちが次々と優勝する姿に「悔しさの方が強かった。焦りもあり、先を越されたような」と稲森。父の言葉に奮起し、9月からドライバーを替えるなど今大会に照準を合わせた。

 実家の打撃練習場では、幼少時から毎日300~400球のショットを欠かさない。一方、4年連続フェアウェーキープ率1位の“曲がらない男”はチャンスにつけても、それを仕留めるパットが苦手だった。2月に合宿地の宮崎で、通算20勝のパットの名手・谷口徹(50)に「(カップに届かない)“しょんべんパット”はするな」と言われ、オーバーさせるほど強気に打つようにした。今大会中も1時間は練習グリーンに居残った。

 優勝で、海外メジャー初出場となる来年の全英切符を獲得した。賞金ランク2位に浮上し、25日開幕の世界選手権シリーズ、HSBCチャンピオンズ(中国)に出場する。「松山(英樹)さん、小平(智)さんみたいに海外で活躍できる選手になりたい。今のスタイルはこれからも貫く。しっかり芯で捉えて真っすぐに」。身長169センチの小さな王者は、志も曲げるつもりはない。(岩原 正幸)

 ◆稲森が達成した主な記録

 ▽パー71での大会最少ストローク優勝 2010年の金庚泰(愛知CC東山C)の13アンダー(271)を更新する14アンダー(270)

 ▽今季11人目の初優勝 1973年のツアー制施行後では97年と並び歴代4位。最多は81年の16人

 ▽大会4番目の年少V 24歳0か月は、16年大会で24歳7か月の松山英樹を上回る4位。最年少は28年・浅見緑蔵の19歳9か月

 ▽九州出身の今季優勝者 重永亜斗夢、時松隆光、秋吉翔太、出水田大二郎に次ぐ5人目

 ▽鹿児島出身の優勝 浦西武光、小田龍一、出水田大二郎に続く4人目

 ◆稲森 佑貴(いなもり・ゆうき)1994年10月2日、鹿児島市生まれ。24歳。実家は練習場。鹿児島城西高2年時の2011年、16歳でプロテストに一発合格。14年ダンロップ・スリクソン福島オープン、15年ブリヂストンオープンで2位。16年までキャンピングカーで父と転戦。169センチ、68キロ。家族は両親。

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