【北海道出張記者のなまらいい話】函館2歳Sで重賞初制覇の小崎騎手、豪州武者修行で磨いた強い心が成長の証し

スポーツ報知
昨秋のオーストラリアで自主研修中の小崎(本人提供)

 1年ぶりに会った彼は、着実にステップアップしていた。昨夏の北海道シリーズで取材した小崎綾也騎手(23)は、アスターペガサスと挑んだ函館2歳Sで重賞初制覇を果たした。「1つ前に進めました。焦りはなかったが、チャンスをもらったら結果を出したいと思っていたので」。努力が報われたことが、記者も素直にうれしかった。

 昨年8月下旬から年末までの約4か月間、海外研修のためオーストラリアへ渡った。身元引受先は、現役最強牝馬ウィンクスなどを管理する名門クリス・ウォーラー厩舎。デビューからケガが多く、経験を積んで成長したかった。海外競馬への憧れも強く、純粋な気持ちで飛び込んだが、現実は生やさしくはなかった。

 まずぶつかったのは言葉の壁。「全然、聞き取れなくて…。何度もゆっくり言ってもらっても分からなかった」。もちろん通訳などいない。最初の2週間はふさぎ込みそうになった。競馬場近くのシェアハウスで共同生活するスタッフと、何とかコミュニケーションを取って仕事を覚えていった。毎日7、8頭の調教をつけ、馬の手入れなど厩舎作業もこなす日々は無我夢中だった。

 そのなかで同じシドニー地区で活躍する日本人騎手の市川雄介さん(28)は励みとなる存在だった。JRA競馬学校に受からず、単身渡豪して09年にデビュー。現地で100勝以上を挙げており、「騎手になるために外国に行き、結果を出せているのがすごい。尊敬しています」と刺激を受けた。自身の豪州での騎乗数は計29鞍(最高着順2着)。「未熟さを感じた。でもアウェーの環境に出たことは、馬乗りとして成長できたかなと思う」と悔しさを大きな糧とした。

 そして翌年にめぐってきた重賞制覇のチャンス。後方から進んで4コーナーでは馬群を割り、豪快なフォームで必死に追い込んだ。「普段なら行かない狭いところでも、脚があるからこそ行った。ワンテンポでも迷ったら負けていたと思うけど、馬の力を信じていた」。鼻差で届いた勝利への執念。レース後には市川さんから祝福の連絡をもらった。「技術的にうまくなってるかは分からない」と謙遜するが、何より武者修業の経験で磨けたのは強い“心”。初タイトルには成長の証しが詰まっていた。(坂本 達洋)

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