【菊花賞 松本好雄オーナーインタビュー】メイショウテッコンでラスト1冠 「新たな感激に出合いたい」

スポーツ報知
メイショウテッコンで菊花賞に挑む松本好雄オーナー。背広の裏地には2冠馬メイショウサムソンの雄姿が

◆第79回菊花賞・G1(10月21日、芝3000メートル、京都競馬場)

 「メイショウ」の冠名でおなじみの松本好雄オーナー(80)が、第79回菊花賞・G1(21日、京都)にメイショウテッコンを送り込む。2冠馬メイショウサムソンで臨んだ06年は、1番人気に支持されながらも4着。あれから12年、ラスト1冠への思いをスポーツ報知の単独インタビューで語った。

 ―菊花賞が近づいてきました。松本オーナーが思うメイショウテッコンの良さはどの点ですか?

 「先行して非常にしぶといですね。この春、特に印象的だったのは京都新聞杯です。前に行って差されて5着でしたが、最後までよく我慢していました。あのレースを見て強いな、これからが楽しみだなと思いました。ダービーには出られなかったけど、次のラジオNIKKEI賞で初めて重賞を勝って、改めて能力の高さを感じ取りました」

 ―前走の神戸新聞杯は3着でした。

 「2か月半ぶりだったのですが、その間に背がうんと高くなり、体重が14キロ増えて成長していました。レースはスタートして少しよれて接触してハナに行ったということなんですけど、よく頑張っていたと思います。やっぱり勝った馬はダービー馬のワグネリアンですからね。2着のエタリオウも強いし、皐月賞馬(エポカドーロ=4着)もいましたから。そのメンバーで1着とは半馬身と頭差だから、世代の上位が相手でも十分に通用することが分かりました」

 ―管理するのは高橋義忠調教師。かつてメイショウバトラー、メイショウサムソンなどを管理した高橋成忠調教師(11年に定年)の長男です。

 「お父さんは私の所有馬で最も多く勝っていただき、本当に頼りになる調教師さんでした。彼がお父さんの厩舎で調教助手をしていて、サムソンが凱旋門賞(08年10着)へ行ったときのことです。私がフランスの滞在厩舎を訪れて『ご苦労さま』と言ったら、彼が男泣きのような感じで涙を流していた姿を覚えています。『(調教師の)勉強をしてお父さんの後を継いでほしい』と話したことがあるのですが、その期待に応えてくれて、立派な調教師になりました」

 ―メイショウテッコンを義忠調教師に預けることに決めたのはなぜ。

 「16年の北海道セレクションセールにたくさんの調教師さんと行っていました。体が柔らかくて骨量があって、あまり欠点がないように見えたので私が『この馬どうかな』と言うと、他の調教師さんも賛同してくれて1728万円で買いました。そこでパッと見ると義忠君がいて『この馬、やるか?』と言ったら、『やらせてください』と。努力している子だし、自分がいいなと思う馬を彼にお願いしたい気は以前からあったのですよ」

 ―松本オーナーはメイショウサムソンで皐月賞、ダービー(06年)を勝っています。牡馬クラシック3冠がかかった菊花賞は、1番人気に推されながら4着でした。

 「本当に周囲の期待が大きく、我々も勝てるのではと思って緊張していました。随分と応援したけど、勝つことはできず、それも競馬だなと思って見ていました。3冠達成記念のアドバルーンが用意されていて、勝てば京都競馬場の空に上がるはずだったんですよ。あれから干支(えと)がひと回りもしたのですね」

 ―菊花賞は勝ちたい?

 「オーナーとしてこれだけ多く勝たせていただいたから、どのレースを勝ちたいというこだわりは意外とないんです。菊花賞に出られること自体がうれしいです。今まで出走は5回だけで、他のG1に比べて少ないですからね。春の天皇賞といい、淀の長距離レースには特に歴史の重みのようなものを感じます」

 ―最後に意気込みを。

 「義忠調教師からは『大一番に向けて順調に調整は進んでいます』と報告を受けています。マンハッタンカフェの子で走りっぷりがいいから、3000メートルでも楽しみを持てると思います。松山君には悔いのないように乗ってほしいです。サムソンで京都の天皇賜杯をいただいた(07年天皇賞・春優勝)ときのような、新たな感激に出合いたいですね。強い相手がそろっていますが、めったにないチャンスだから頑張ってほしいです」(取材、構成・内尾 篤嗣)

 ◆松本 好雄(まつもと・よしお)1938年1月6日、兵庫県明石市生まれ。80歳。千葉工大卒。船舶エンジンや航空機部品など大型機械部品や産業機械などを製造・販売する株式会社きしろ代表取締役会長。07年に紺綬褒章、10年に旭日小綬章を受章。主な所有馬はメイショウサムソン、メイショウドトウ、メイショウボーラー、メイショウマンボ。05年より日本馬主協会連合会会長を務め、現在は名誉会長。冠名のメイショウは「明石の松本」が由来。テッコンは「鉄魂」。

<普段通り順調> ○…メイショウテッコンはこの日、栗東・坂路を62秒7でスムーズに駆けた。中塚助手は「いつもの感じで順調です。春と比べて成長しています。3000メートルはやってみないと分からないけど、折り合いのつく馬で、血統面からもステイヤーであってほしいです」と距離克服を願っていた。

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