【エリザベス女王杯】リスグラシュー悲願のG1初制覇!モレイラ大暴れ!JRA・G1初V&JRA100勝&一日5勝&落馬も!

スポーツ報知
力強く伸びたリスグラシュー(手前)が首差差し切って悲願のG1初制覇

◆第43回エリザベス女王杯・G1(11日、京都・芝2200メートル、良)

 第43回エリザベス女王杯・G1は11日、京都競馬場の芝2200メートルで争われ、3番人気のリスグラシューが逃げ粘るクロコスミアを首差とらえて優勝。4度の2着を含む8度目の挑戦で、悲願のG1初制覇を果たした。騎乗したジョアン・モレイラ騎手(35)=ブラジル=は一日5勝の固め勝ちで外国人騎手が11勝した京都で輝きを放ち、自身のJRA・G1初勝利に花を添えた。

 残り300メートル。モレイラは勝利を確信した。リスグラシューは左ステッキに反応し、加速を続けている。しぶとく粘るクロコスミアも勢いよくパス。差し返す余裕を与えず首差振り切ってゴールした。「長年の夢がかなった」。何度も右手を握り、JRA・G1初制覇の喜びをかみ締めた。

 課題のスタートを完璧に決めると、中団の馬群で折り合った。直線入り口で外に持ち出して進路を確保。手応え通りの伸びで直線を貫いた。矢作調教師が「何であんなにうまいのか」と感嘆する手綱さばきで、実戦初騎乗のパートナーを牝馬NO1の座へ導いた。

 話題独占の“モレイラ・デー”となった。5勝を挙げたこの日は、8Rでスタート直後に落馬。担架で運ばれヒヤリとさせたが、直後の9Rで史上最少騎乗数となる294戦目でのJRA通算100勝を達成。雷神の異名を持つ35歳は「熱い応援が、勝ちたい気持ちを強くさせる。感謝しかない」。周囲のバックアップに結果で応え、優しく笑った。

 天国に捧げる一勝だ。7歳の時、ブラジルの実家で酪農農家を営んでいた父・ジョワキンさんが他界。名手の目には、家族のため懸命に働く姿が焼き付いている。「一緒にいることはできなかったけど、どこかで見てくれているかも」と感慨深げに遠くを見つめた。

 厩舎も悲願を成就させた。これまでG1で2着4度。8度目の挑戦を実らせた。「これだけ強い馬にG1タイトルがないのが情けなかった」と矢作師。若い頃はカイバ食いが良くなく、輸送するたびに馬体を大きく減らした。牝馬特有の繊細さに苦労したトレーナーだったが「今年の春頃から馬が自分で進化してくれた」。この日の462キロはデビュー戦から30キロ増。トップレベルで走り続けてきた経験が加わり、何事にも動じない精神力を身につけていた。

 次走は登録している香港カップ(12月9日、シャティン競馬場)などの香港国際競走か、有馬記念(12月23日、中山)を視野に入れる。次回のG1は来週のジャパンCの騎乗となるモレイラは「これで終わりじゃない。この馬で、またG1が取れるように準備したい」と宣言。特別な一日を過ごした人馬が、さらに大きなステージを目指す。(吉村 達)

 ◆リスグラシュー 父ハーツクライ、母リリサイド(父アメリカンポスト)。栗東・矢作芳人厩舎所属の牝4歳。北海道安平町・ノーザンファームの生産。通算16戦4勝。総収得賞金は4億615万3000円。主な勝ち鞍はアルテミスS・G3(16年)、東京新聞杯・G3(18年)。馬主は(有)キャロットファーム。

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