【朝日杯FS 広崎利洋オーナー インタビュー】ファンタジストで武豊騎手が朝日杯FS初勝利を挙げれば「ドラマだなと思う」 

スポーツ報知
京王杯2歳Sのファンタジストの優勝パネルを手に笑顔を見せる広崎利洋オーナー

◆第70回朝日杯FS・G1(12月16日・芝1600メートル、阪神競馬場)

 JRA・G1で75勝を挙げる武豊が朝日杯FSは勝っていないのは、競馬界の七不思議のひとつといってもいいだろう。今度こその思いで臨む今年のパートナーは、重賞2連勝を含む3戦無敗のファンタジストだ。同馬を所有する広崎利洋オーナー(71)をスポーツ報知が直撃。レッツゴードンキ、ストレイトガールに続くG1奪取へ、天才騎手とのコンビで臨む2歳王者決定戦への思いを聞いた。(聞き手・内尾 篤嗣)

 ―ファンタジストは前走の京王杯2歳Sは鼻差での勝利でした。

 「東京競馬場で見ていたのですが、僕は勝ったか、負けたか分からなかったのですよ。周りが勝ったと言うから、本当かな、と思いまして。エキサイトせず、込み上げる喜びですよね。ストレイトガール、レッツゴードンキで4回もG1を取らせてもらっているので、冷静でいられました」

 ―無傷の3連勝でG1に駒を進めます。

 「すごい馬ですよね。新馬、小倉2歳S、前走の京王杯2歳Sと、ぶっち切りの勝利ではないので派手さはないけど、かといってオーラが出ていないわけでもありません。なんだか運気を持った馬だと感じます」

 ―いずれも武豊騎手とのコンビでの勝利です。

 「お父さんの武邦彦さんには馬を預かってもらって随分、お世話になりました。誰に対しても優しくて礼儀正しい方。オーナーになって間もない時、私のような若輩者にすごく丁寧に接していただき、そういう人間にならなければ、と常に思っていました。息子の豊さんは日本競馬の至宝。人格、技術、才能、そして運気の全てに恵まれています。もうそんな方は現れないのではないでしょうか。そんな豊さんが勝っていないという朝日杯FSのタイトルを私の馬で贈ることができれば、これ以上うれしいことはありません」

 ―管理する梅田智之調教師は、広崎オーナーが所有するレッツゴードンキで桜花賞(15年)を制覇しました。

 「彼は負けず嫌いで、優しくて、自分のペースを崩さず、興奮せず。いい調教師ですよね。調教を担当するのがレッツゴードンキと同じ前原(旧姓西原)玲奈助手で同じチームなのです。今回は(グランアレグリアの)藤沢和さん、(アドマイヤマーズの)友道さんなど、名トレーナーのなかで大変と思いますが、頑張ってほしいです」

 ―ファンタジストの当歳の頃の印象はどうでしたか。

 「すばしっこかったですよ。それで素直で頭がいい。だから今、レースでやるべきことを分かって走っているのだと思います。4月(22日)生まれだから、まだまだ伸びていきますよね。栗東の坂路でラスト11秒台を平気で出していて、調教、体力、成長のバランスが取れているのでは。夏のデビュー時から前走では26キロ(448キロから474キロ)も増えていて、その上げ幅の成果がG1でどんなふうに表れるのか、楽しみにしています」

 ―広崎オーナーゆかりの母系ですね。

 「おばあさんのマーズプリンセスは私の所有馬ではないけど、デインヒルの子で大好きな馬だったのですよ。お願いしてディープインパクトをつけさせてもらい、お母さんのディープインアスクを伊藤正徳さんのところに預けさせてもらいました」

 ―姉のコロラトゥーレ(父タイキシャトル)は同じ梅田厩舎で3勝していますね。

 「うれしいですよね。その次のプリティーレディー(父エンパイアメーカー)は1戦だけで引退したんですが、繁殖牝馬にしたくて、イギリスのナショナルスタッドに持っていきました。絶対、将来いい子を産んでくれると思います。その下がファンタジスト。オーナーブリーダーとして所有した馬の子供だから、思いはすごく強いです」

 ―広崎オーナーは2歳G1ではレッツゴードンキで2着になった14年の阪神JF以来の出走です。

 「あのときは、同じ日にストレイトガールが香港スプリントに出ていたので、私は香港にいました。同じ時間に走ったんですよ。電話で中継をしてもらい、向こうが『来ました! 来ました!』と言っていたら、プツッと切れて。勝ったのかなと思ったら、ゴールの5メートル手前でショウナンアデラにかわされていました。電話が終わると、香港はゴールの100メートル手前。ストレイトが外からスーッと伸びてきました。結果は3着(勝ち馬エアロヴェロシティ)だったけど、本当に楽しませてもらいました。ハッピーですよね」

 ―ファンタジストの馬名の由来を教えてください。

 「私の事業(アスクグループ)は企画会社。都市計画など、自分が組み立てて、プランニングした将来に対して、実践して積み上げていくわけです。それで期待の馬に『夢追い人』という意味の名前をつけました。本当はファンタジスタですけど、人とはちょっと違う自分なりの呼び方がファンタジストなんです」

 ―馬主としての初陣は1989年6月10日(札幌新馬1着)のアスクヒーロー。88年11月に馬主資格を取得。30年がたちました。

 「初出走は平成元年ですね。アスクヒーローは伊藤雄二先生で、河内洋騎手が乗って勝ってくれました。馬主30年、平成30年。その平成がもう終わります。15年を1周期で見たら、アーリーステージはフューチャサンデー(00年クイーンC)、ネヴァブション(07年日経賞など重賞3勝)などに楽しませてもらって。次にミドルステージでは、レッツゴードンキ、ストレイトガールで栄光をもらいました。現在はファイナルステージに入って、その先頭がファンタジスト。これから10年、15年と、のんびり楽しませてもらおうと思っています。そう考えると、イギリスで繁殖生活を送るストレイトガールの子供が次の世代になります」

 ―平成最後の朝日杯FS。ファンタジストにとって、どんな意味を持つレースになりますか。

 「登竜門みたいなレースで、今回の結果で宿命が決まる気がするのですよ。勝ったら名馬になれる可能性があります。(来春の目標は)1着なら皐月賞、2着、3着だったらNHKマイルCと考えています。どっちになるのか、挑戦ですよ。前走から距離が延びて、初めてのマイルでも大丈夫だと思います。ロードカナロア産駒は短距離と思われがちだけど、アーモンドアイがジャパンCで悠々と勝っていたし、父自身もマイルのG1を勝っていますからね」

 ―最後に意気込みを。

 「『夢追い人』のファンタジストはどこから来ているか。思い浮かべれば、吉田松陰先生の『夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に夢なき者に成功なし』につながります。夢のない者にG1は取れません。夢、理想は朝日杯FSで1着になること。そして武豊騎手が朝日杯FSはまだなので、勝てばドラマだなと思っています」

 ◆広崎 利洋(ひろさき・としひろ) 1947年2月4日、71歳、兵庫県西宮市生まれ。甲南大学経営学部卒業。ASK HOLDINGS株式会社・代表取締役。88年11月に馬主資格を取得し、グループ全体でJRA通算181勝。G1の4勝を含む重賞12勝。京都馬主協会相談役。座右の銘は「受けた恩は意志に刻め」、「授けた情は水に流す」。カントリーミュージックを愛する。血液型AB。

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