【有馬記念 オジュウチョウサン二刀流の夢<1>】グランプリ挑戦の始まりは、中山グランドジャンプ3連覇

スポーツ報知
今年の中山グランドジャンプで3連覇を飾ったオジュウチョウサン(右)。2着のアップトゥデイト(左)に大差をつけた

◆第63回有馬記念・G1(12月23日・芝2500メートル、中山競馬場)

 障害王者のオジュウチョウサンが有馬記念に参戦する。再転向した平地競走で2連勝を飾り、有馬記念のファン投票3位で切符をつかんだ。オーナーの長山尚義氏がどのように二刀流で有馬記念挑戦までに至ったか。7回にわたって連載する。

 王者をたたえる温かい拍手と歓声が沸く直線で、鞍上の石神深一は不思議な感覚に襲われた。なおもオジュウチョウサンは、重心の低いフォームで前へ進もうとしている。視線の右に映るターフビジョンで大差を確認して、最後は流そうとしても、力強いフットワークが体に伝わってきた。「まだ余裕がある。レースを使うごとに、まだ強くなっている」と衝撃を受けた。

 3連覇を果たした今年の中山グランドジャンプは、2着アップトゥデイトに大差をつけて従来のレコード(15年アップトゥデイト)を3秒6も上回る4分43秒0の圧勝。多くの障害を飛び越え、高低差のあるコースを4250メートルも走り抜いての激走だったが、検量室前に引き揚げてきた姿も見る者を驚かせた。

 手綱を手に迎えた担当厩務員の長沼昭利は、オジュウチョウサンの息が整い始めているのに気づく。「みんなヘロヘロになって引き揚げてくるのに、こいつはシャンとしている」。驚異のスタミナに“化け物”という言葉が頭に浮かんだ。

 その無敵の走りを支えるのは優れた心肺機能だ。開業獣医師の関元邦弘は、今年の牝馬3冠馬アーモンドアイなど国枝、藤沢和、堀と美浦の有力厩舎も担当している。「あの荒い気性で心拍数は少ない方。具合が良くなると心臓の状態の上昇度がすごいし、ああいう馬は心拍の音がはっきりしている」と明かす。人間のアスリートにも通じるように、心臓のポンプの強さが抜群の持久力を生み出す原動力となっている。

 そして歓喜に包まれた口取り式で、誰にも想像のつかないことを思いついた男がいた。上がり3ハロン36秒9の数字…。「平地で走らせても、一線級相手に通用するのでは…」。それは(株)チョウサンのオーナー・長山尚義だった。=敬称略=(取材、構成・坂本 達洋)

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