【凱旋門賞 前田幸治オーナー・インタビュー】「武豊騎手で勝てたら最高だと思っています」

スポーツ報知
凱旋門賞挑戦への思いをにこやかに語った前田幸治オーナー

◆凱旋門賞・仏G1(7日・芝2400メートル、パリロンシャン競馬場)

 世界の数々の大レースへ所有馬を送り出してきたノースヒルズ。13年のキズナ(4着)以来となる仏G1の凱旋門賞(7日、パリロンシャン競馬場)へ、クリンチャーを出走させるグループ代表の前田幸治オーナーが本紙の単独インタビューに応じ、夢へ挑戦する思いや意気込みなどを熱く語った。(聞き手・内尾 篤嗣)

 ―クリンチャーで凱旋門賞に挑戦しようと思ったきっかけは。

 「斤量の軽い3歳で挑戦するために、ひとつの指標にしていたダービー(13着)では結果を出せませんでした。ですが、菊花賞(2着)では、不良馬場でもあれだけ走ることができましたし、長距離適性も高い。ならば、重い芝のロンシャンの2400メートルは合うのでは、と挑戦を強く意識し始めました」

 ―前哨戦のフォワ賞(6着)を、どのようにとらえていますか。

 「少頭数で前に行って結果的に目標にされる形になりました。確かにファーブル厩舎の上位3頭は強かったですが、そこまで大きく離されたわけではありません。あくまでトライアルであり、コースを経験できたことは大きいはず。本番につながると思っています」

 ―前田オーナーが思うクリンチャーの良さとは。

 「第一は成長力。最初はトモ(後肢)が弱かったのですが、どんどん強くなってきました。そして体幹がいいですね。印象的なレースにまず菊花賞を挙げましたが、重賞初勝利の京都記念の勝ち方も素晴らしかったです。急な乗り替わりのあった天皇賞・春(3着)も本当によく走っています」

 ―ノースヒルズとしては13年のキズナ(4着)以来の凱旋門賞です。当時を振り返ってください。

 「前哨戦のニエル賞を勝って3番人気になり、チャンスはあると思ったのですが、甘くはなかったです。オルフェーヴルに5馬身差をつけて勝ったトレヴの強さに驚き、私たちもあのような競走馬をつくりたいと思いました」

 ―今回もキズナのときと同じ武豊騎手とのコンビになります。

 「彼は何事においてもスマートですよね。そういう彼が人として大好きですし、彼自身、若い時からずっと世界に目を向けて挑戦を続けている。私たちのモットーもチャレンジング・スピリット。彼とは同じ気持ちで夢に挑戦しています。日本馬が初めて凱旋門賞を勝つなら日本人ジョッキーで。それも第一人者の武豊騎手で勝てたら最高だと思っています」

 ―前田オーナーは84年から牧場経営を始め、今年で35年目になります。特に印象的だったことは。

 「最初の2、3年でダービーも桜花賞も取れるという甘い考えでしたが、現実は違いました。98年にファレノプシスでようやく桜花賞を勝つことができ、そのときは最高にうれしかったです。そのほか、天覧競馬となった05年の天皇賞・秋、ヘヴンリーロマンスでの勝利や、生産馬のキズナで初めてダービー(13年)を勝てたこと。特に印象的なのは、その3つですね。自家生産にこだわり、精密な高級機械式腕時計を作るように、丁寧な馬づくりを心掛けてきました。手塩にかけて生産し育成した競走馬が大きな勝利を得た時の喜びは、何事にも代えがたいですね」

 ―最後に意気込みを聞かせてください。

 「これまで16年にラニで挑戦したアメリカ3冠レース、トランセンドが2着になったドバイ・ワールドC(11年)など、世界各国の最高峰の舞台を目標に挑んできました。今回の凱旋門賞では、まずは無事に走ってくれること、そしてひとつでも上位に来てほしいです。夢をかなえるまで挑戦に終わりはありません。チャレンジを続けていれば必ずいつか花は開くと信じていますので、皆様からも応援をよろしくお願いします」

 ◆前田 幸治(まえだ・こうじ) 奈良県吉野郡生まれ。アイテック株式会社代表取締役会長。趣味は日本画鑑賞、読書。生産馬で13年キズナ、14年ワンアンドオンリーで日本ダービーを連覇。他にも牝馬G1・3勝のファレノプシスなど活躍馬は多数。ノースヒルズグループでは重賞通算141勝(うちG1・30勝)。前田晋二氏は弟、前田葉子氏は妻。

 ◆株式会社ノースヒルズ 北海道・新冠町にある競走馬の生産牧場(120ヘクタール)及び、オーナーブリーダー。関連施設は鳥取伯耆町の育成牧場である大山ヒルズ。昨年9月には北海道・清畠に1歳馬の育成牧場であるノースヒルズ清畠(約100ヘクタール)がオープン。グループの代表者は前田幸治氏。

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