【メルボルンC・能力分析】長距離戦を得意とする欧州調教馬を分析

スポーツ報知

 G1メルボルンCが11月6日に迫った。昨年はアイルランド調教馬が1~3着を独占するなど、やはり長距離戦を得意とする欧州調教馬が強いレース。今年もイギリスとアイルランドを中心に強力なメンバーがそろった。

 地元オーストラリアで最有力候補と目されているのが、アイルランドのエイダン・オブライエン調教師が手掛けるユカタン(牡4歳)。前走の豪G2ハーバートパワーS(芝2400メートル)で圧倒的な勝利を収めて、一躍注目される存在となった。

 先日のG1コーフィールドCと同じ舞台のハーバートパワーSでは、後方待機から向正面で徐々にポジションを上げると、残り600メートル過ぎで早くも先頭へ。最後の直線では余力十分のまま他馬を突き放し、一時は6馬身以上の差をつけたが、残り100メートル過ぎで鞍上のジェームズ・マクドナルド騎手が手綱を緩めたため、最終的には2着馬に1馬身1/4差をつけてのゴールとなった。

 ユカタンは2歳時に英G1レーシングポストトロフィー2着の実績があり、元々陣営の期待が大きい一頭だった。現地の堅い馬場がよほど合ったのか、今まさに素質が開花中という印象。破格のパフォーマンスを見せたことで、メルボルンCでのハンデは当初より2・5キロ増の54・5キロに設定されたが、目下の勢いで難なく突破しそうだ。

 同じオブライエン厩舎では、ザクリフスオブモハー(牡4歳)とロストロポーヴィチ(牡3歳)も警戒が必要だろう。

 ザクリフスオブモハーは前走のコーフィールドCで、極端なスローペースの中、後方から末脚を伸ばして3着に好走。鞍上のヒュー・ボウマン騎手も先を見据えてか、最後は流しながらレースを終えていた。これまでとは一転して、ゲートをスムーズに出て流れに乗れていたことも収穫といえる。

 ロストロポーヴィチは今年のG1愛ダービーで2着。しぶとく逃げ粘り、勝ち馬のラトローブには交わされたが、あのサクソンウォリアー(3着)の追い上げを封じた。前走の豪G1コックスプレート(5着)はウィンクスやベンバトルなど強敵を相手に、終始、外々を回る厳しい展開。大目標の今回へ向けた試走としては、まずまずの内容だった。先行力があり、軽ハンデの51キロを生かしてロスなく運べれば侮れない。

 イギリスのマジックサークル(セン6歳、ウィリアムズ厩舎)は今年2戦2勝。5月の英G2ヘンリー2世S(芝3250メートル)では、後続に6馬身差をつけて大勝。追い出されるとあっという間に抜け出して、ステイヤーとしての高い資質を証明した。今回はそのヘンリー2世S以来の休み明けで、豪州の馬場が合うかといった課題もあるが、2009年のショッキングと昨年のリキンドリングでメルボルンC2勝のコーリー・ブラウン騎手を鞍上に迎えるのは、大きなアドバンテージ。やはり怖い一頭といえる。

 イギリスのムンタハー(セン5歳)は、エネイブル、クラックスマン、ロアリングライオンなどスーパースターを続々と送り出すジョン・ゴスデン調教師の管理馬。前走のイボアヘリテージH(芝2770メートル)では、のちにG1愛セントレジャーで3着に好走するウィーケンダーに3馬身1/4差をつけて快勝。20頭立ての一戦ながら、抜群の手応えで突き抜ける脚力を見せた。豪州の馬場に適応できれば、上位争いに加わるだろう。

 ◆成田幸穂(なりた・さちほ) 1984年8月8日、東京生まれ。(株)サラブレッド血統センター所属。週刊競馬ブック連載「海外競馬ニュース」の編集を担当。同誌のほか、南関東版・競馬ブックと研究ニュースで予想コラム「血統アカデミー」を執筆中。ラジオNIKKEIの「メルボルンカップ実況中継」に出演予定。

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