難しいことをより分かりやすく伝えるために、現場で感じた素朴な疑問を取材でとことん解消し、かみ砕いて読者に伝えることを大切にしています。
社会面というと就活生の皆さんは、一般紙のイメージが強いと思います。私もスポーツ紙の社会面にどんなことが求められているのか、まだ明確な答えは分かりません。ですが、原稿の内容や見出しなどを含め一般紙にないような切り口や、よりその問題を分かりやすく伝える工夫が求められていると感じています。
私は主に都庁担当として小池百合子都知事周りの取材をしていて、2020年の都知事選では初めて選挙取材を経験しました。一般紙が選挙の争点や行政課題などを伝える中、弊紙では連載の一つとして、小池都知事が「都民ファースト」など横文字を交えたフレーズを多用することについて“ルー語”でおなじみのタレント・ルー大柴さんに語ってもらう企画を掲載しました。
ルーさんの記事は読者や他紙の記者からも好評でした。エンタメ的な要素も織り交ぜながら、より多くの人に時事的な問題に興味を持ってもらうこともスポーツ紙社会面の役割だと考えています。
街の人、政治家、小説家、日本で東京五輪の事前合宿を行っている南スーダン選手団など幅広い対象を取材できることが社会部記者の面白いところだと思います。
中でも2020年8月28日、安倍晋三首相(当時)の辞任表明会見に参加し、直接質問をしたことは今後の記者人生においても忘れがたい経験です。
会見の日は運良く抽選に当選し、私が現場に入ることになりました。初の官邸取材が首相の辞任会見となり、周りは一般紙のベテラン記者ばかりで緊張しましたが、またとない機会なので挙手し続けました。
質疑応答で最後の一問を迎えてついに指名され、辞任による五輪開催判断への影響と、首相として大会を迎えられないことへの思いを聞きました。私が高校生の頃から首相であった人に、スポーツ紙の記者として最後の会見で五輪関連の質問ができたことは貴重な経験になり、先輩記者や友人からも多くの連絡や反響がありました。
映画「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」の中に、「新聞は歴史書の最初の草稿」という表現がありますが、まさに歴史や社会の潮目が変わるような瞬間を目の当たりにし、“いま”起きていることを原稿にして伝えられることは記者の醍醐味だと思います。