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タコライスの町でオズの魔法にかけられた…浦和・オリヴェイラ監督の言葉力

2019年2月14日16時35分  スポーツ報知
  • オリヴェイラ監督

 「練習試合では勝ち点3は得られない」。

 J1浦和のオズワルド・オリヴェイラ監督(68)の一言だ。芸能担当から1月にサッカー担当になり、沖縄キャンプ取材に初めて訪れた記者には、当たり前の言葉ながら深い一言に聞こえた。

 那覇から車で北へ約1時間走った海沿いの街・金武(きん)町。10年に総重量745kgのジャンボタコライスを作りギネス世界記録に認定されたことから「タコライス世界一の町」の看板が印象的な小さな街だ。浦和イレブンはこの地で行った春季キャンプを2月8日に打ち上げた。

 元々フィジカルコーチで、49歳で初めて監督になった指揮官のモットーは「キャンプはあくまで練習、準備の時間」ということ。リーグ、ACLなど1年を戦い抜けるフィジカルを作り上げるため、走り込みやドリブルを交えたサーキットトレーニング、砂浜での練習などに時間を割いた。選手たちは「かなりキツかった」と口をそろえ、横浜Mから新加入したDF山中亮輔も「今まで自分が経験したキャンプの中で一番ハードだった。午後休みとかがなく、しっかり2部練習する」と驚いていた。

 監督の信念のもと、沖縄の1次、2次キャンプでの練習試合は、元日本代表FW高原直泰が率いる沖縄SVとの1試合のみだった。主力組は、50×1本だけで実戦練習を終え、選手の中には「1試合だけで不安」「もう少しやりたかった」と物足りなさを漏らす声もあった。

 同じ沖縄でキャンプしたF東京が練習試合を計6日間にわたって行うなど、しっかり実戦を積んでキャンプを打ち上げるチームが多い中、オリベイラ監督は90分の練習試合を一度もやらなかった。

 指揮官はその理由を説明した。「練習試合はあくまで練習の延長。今年は(最大で)70試合やることになる。だから、今はエネルギーをじっくり蓄える時。練習試合では勝ち点3は得られないからね。勝ち点がかかっていない試合で選手が負傷する可能性もある」。

 頭の中にあった疑問は少しずつ解消され、納得させられる力がある。MF宇賀神友弥は「不安はあるけど、逆に言えば試合に飢えてる。そういう意図も組み込まれてるんじゃないか。監督は(オズの)魔法使いですからね」と笑った。

 厳しい練習の日々が繰り返された中で、オリヴェイラ監督による和やかな雰囲気作りが垣間見えた。練習の最後。2組に分かれた選手がゴール前25メートル付近から次々にボールを蹴りこみ、クロスバーに当てた選手から抜けていくゲームだ。指揮官は「罰ゲームはベリーダンスだぞ!」と選手をあおり、輪の中心で高笑いをあげていた。

 まだある。金武町の施設関係者から昨年の天皇杯優勝を祝う泡盛「残波」を贈呈された際には、優勝カップのようにハイテンションで天に掲げ、「クラブW杯で優勝したら飲むよ」とご満悦。今年初の記者会見では報道陣に「いつも勝利のことを話すライトな会見をしたい。敗戦の時は肩を貸してください。そこで泣きます」とニヤリ。常にダンディーで、真剣なまなざしで大声を上げる姿とのギャップに魅せられる人は多い。

 12日には、監督の新たな改革が始まった。さいたま市内のクラブ施設内の食堂で選手への朝食提供を開始。これまでは昼食のみだったが、午前7時半から8時半まで栄養バランスが取れたメニューが並び、原則として、選手には朝食を食堂でとるように指導していくという。

 指揮官は「子供の頃、母に『空の袋は立たない』と言われた。サッカー選手はしっかり朝食を取ることが練習の燃料になる」と思いを明かした。今年1年、彼の言葉にじっくり耳を傾けていきたい。(記者コラム・星野 浩司)

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