衝突恐れずコミュニケーションを エディー前HCからハリル監督への提言(前編)

2018年1月11日11時0分  スポーツ報知
  • アディダス社のロシアW杯公式球を手に笑顔を見せるラグビーイングランド代表のエディー・ジョーンズ監督(カメラ・清水 武)

 サッカー日本代表が挑むロシアW杯が6月に開幕する。スポーツ報知ではバヒド・ハリルホジッチ監督(65)直筆の題字による「アレ・ル・ニッポン!(いくぞ 日本!)」で関係者のインタビュー、W杯に関する企画を随時掲載する。第1回は、2015年ラグビーW杯日本代表ヘッドコーチ(HC)で現イングランド代表監督のエディー・ジョーンズ氏(57)が登場。ハリル監督と対談経験もある同氏による、世界と戦うための準備や選手選考などへの提言を2回にわたって掲載する。(取材、構成=斎藤 成俊、小河原 俊哉)

 日本代表はW杯までの6か月、どのような準備を進めるべきか。15年ラグビーW杯で日本を率いて、2度の優勝を誇る強豪・南アフリカを破ったエディー氏が、世界を驚かせるチームマネジメント術を熱く語った。

 「ワールドカップに向けては、まずは信念を持つことが重要だ。このようにプレーするんだという信じる心。そして準備と選手の一体感を築くこと。6か月あればチームをかなり変化させることができる」

 エディー氏は厳しい指導と選手管理で知られる。時に衝突も呼ぶが、意見をぶつけ合いながらもチームを強固なものにしていった。

 「コミュニケーションを取ることを何より重視している。私はミーティングでは誰にも携帯電話を持たせなかった。今の若い人は座ったらすぐに携帯。だから、携帯を持たせずに話し合いをするしかない状況にした。こんなこともあった。サントリーの監督に就任した最初のミーティングで、ある選手が寝ていた。私は彼を呼んで言いました。『スーツを着てビールを売ってきてくれ。あなたはここではラグビーはできない』と。その選手は次の日、泣きながら謝ってきた。そして、彼一人の存在でチームは変わった。選手は、やってはいけないことを理解したのです」

 その姿勢は代表監督でも変わらない。(酒豪で有名な日本代表歴代最多98キャップの)大野均へも厳しい態度で接した。

 「均ちゃんは素晴らしい選手ですが、いつも飲んでいた。代表では朝5時半の練習で10分前にいないといけない暗黙のルールがあった。ある時、均ちゃんは5分前に来た。遅刻ではなかったが、私は練習させないで部屋に帰した。それから彼は一番最初に練習場に顔を出すようになった。どれだけ夜飲んでも必ず一番。結果的には酒量も減り、プレーも向上した」

 叱り続けることもあれば、チームメートの前で恥ずかしい思いをさせて自覚を促すこともあった。当然、不満も出たが強化のためには“鬼”となった。

 「日本人はみんなに好かれようと衝突を嫌うが、私が厳しく指摘するのも選手を嫌っているからではない。最終的に選手が自分を向上させるために言ってくれているんだと思ってくれる関係がベスト。お互いが敬意を持つことが大事。正しい関係を築き、ファイティングスピリットを引き出す環境を作る必要がある」

 心と同様にフィジカルもハードな3部練などで徹底的に鍛えた。特にラグビーは、サッカーよりも体格差が及ぼす影響が大きい。

 「フィジカル差を埋めるにはいくつか方法はある。まずは正しい練習をやり切って本当にフィジカルを強くすること。あとは戦術だ。自分たちの体形、相手の体形を考えた戦術を選ぶ。身長で上回るならハイボールを使って空中戦で勝つ。逆に下回るなら速く動きスペースを突く。ほかのチームとは違う勝ち方を見いだし、戦術的に賢く戦わなければならない」

 15年W杯でエディー・ジャパンは1次リーグ初戦で世界ランク3位の南アを34―32で破る番狂わせを起こした。次戦のスコットランド戦は敗れたが、続くサモア、米国に連勝。勝ち点で南アとスコットランドを下回り、W杯史上初めて3勝しながら決勝トーナメント進出を逃したものの世界に衝撃を与えた。その裏には綿密な準備と分析があった。

 「南アは守備に誇りを持っているチーム。試合の序盤で良いタックルをさせると彼らに自信を与えてしまう。そこで開始から日本はボールを持たずに、相手にボールを与えてミスを引き出した。相手はどんどん自信を失い、逆に日本は自信を深めた。そういう戦術だった。そして、これをやり遂げるという信念を選手たちがいかに持つか。そのため、私は“ビートサウスアフリカ”と名付けた練習を何度も何度も繰り返した」

 体に戦術を染みこませることで、選手たちは臆することなく格上に挑み“JAPAN”の名前を世界に知らしめた。

 「大会全体に対する自信は初戦で築き上げられる。初戦で良い試合をすれば、たとえ負けたとしてもそれ以降の試合に向けて自信を手にできる。選手が嫌がるぐらいまで徹底するのがコーチング。本当に細かいところに勝利への道はある。サッカー日本代表もこの6か月でやらなければいけない。全員にチームのルールを理解させる。そうすることで、ワールドカップに立つときは今より強いチームになっている」

 競技こそ違うが、日本代表を躍進させたエディー氏の言葉には重みがあった。(つづく)

 ◆エディー・ジョーンズ 1960年1月30日、オーストラリア・タスマニア州生まれ。57歳。シドニー大卒で現役時代はフッカー。32歳で引退し、2003年にオーストラリア代表監督としてW杯準優勝。07年に南ア代表テクニカルアドバイザーとしてW杯優勝に貢献。09年にサントリーGMに就任し、10年度に監督兼任で日本選手権優勝。11年に日本代表HC就任。15年W杯では南ア、サモア、米国を破る3勝を挙げた。15年11月にイングランド初の外国人監督に就任。

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