西野朗という男…「マイアミの奇跡」12時間前に余裕で雑談
スポーツ報知
「マイアミの奇跡」が起きる12時間前のことをよく覚えている。1996年7月22日。アトランタ五輪1次リーグ初戦で日本がブラジルから大金星を挙げた日の朝のことだ。
チームが宿泊するホテルのロビーで待っていると、西野監督が一人で現れた。「朝から、ご苦労さん」と記者に声をかけると気軽に雑談に応じた。大一番に挑む直前、他者を寄せ付けないほどピリピリ感を漂わせる監督が多い中、西野監督は普段と全く同じ様子だった。ひとしきり話をすると「ここからは独りにしてくれよ。じゃあな」と言い残し、ホテルに隣接した森へ散歩に出かけた。その後ろ姿はカッコ良かった。
監督の態度はチームに伝播(ぱ)する。監督がピリピリすれば選手もピリピリする。監督が自信を持てば選手も自信を持てる。「ブラジルにチンチンにやられるだろうな」と思っていた私は西野監督の余裕を間近に感じて「もしかして今夜は何かが起こるかもしれない」と考えを改めた(後付け感は否めないが)。
ロシアW杯まで2か月。状況は厳しいが、こういう時だからこそ22年前に見せた余裕を再び見せてほしい。2度目の奇跡を期待したい。(竹内 達朗)
◆マイアミの奇跡 1996年アトランタ五輪1次リーグ初戦で西野監督率いるU―23日本代表は、優勝候補筆頭のブラジルと対戦。日本は大苦戦が予想されたが後半27分、MF伊東輝悦がゴール前のこぼれ球から先制。守ってはGK川口が28本のシュートを抑え、1―0で勝利した。ナイジェリアに負け、ハンガリーに勝ち2勝1敗としたが1次リーグで敗退した。