森保流「愛ある采配」でサブ組が躍動

スポーツ報知
試合後、勝ち越しゴールを決めた塩谷と握手を交わす森保監督(右)(左は室屋=カメラ・竜田 卓)

◆アジア杯1次リーグ第3戦 日本2―1ウズベキスタン(17日、カリファ・ビン・ザイードスタジアム)

 日本代表は17日にウズベキスタン代表と対戦、2―1で逆転勝利を収め、1次リーグ(L)3連勝で1位突破を決めた。森保一監督(50)はオマーン戦(13日)から先発10人を入れ替え、前半43分にFW武藤嘉紀(26)=ニューカッスル=が同点弾、後半13分にはMF塩谷司(30)=アルアイン=が決勝点を挙げた。21日に決勝トーナメント(T)1回戦でサウジアラビアと対戦する。

 ピッチで一番喜んでいたかもしれない。森保監督は1点を追う前半43分、FW武藤がヘディングでネットを揺らすとベンチ前で破顔し、大きくうなずきながら何度も手をたたいた。「下を向いて、足を止めていたら、失点直後に同点には追い付けなかったと思う。顔を上げて、次の戦いに切り替えてやってくれたことが逆転につながった」

 サブ組の活躍を促したのは、森保監督にほかならない。練習前後は選手の立場、立ち位置にかかわらず声をかける。西野朗前監督(63)がそうだったように必要以上に選手と接触しない監督も多い中で「なるべく全員とコミュニケーションを取りたい」と考えは明確で、「出られない選手は悔しい。モヤモヤを抱えてプレーしてほしくない」という理由からだ。

 UAE入り後は、DF塩谷と同国の文化、生活についての話をしていた。DF槙野は「森保さんはいつ、どのタイミングで必要になるか、それを言ってくれる。選手としてはモチベーションを保ちやすい」と明かす。MF乾が交代枠2つを残したトルクメニスタン戦について直接質問したように「監督に言える空気」もつくろうとしている。

 「本音と建前。それを使う(使い分ける)ことでみんなが納得できればいいですが、チームに悪影響が出るのはよくない。できるだけ本音と建前がないように」。全員をピッチに、と発言したら本当に先発10人代える。メディアへの発言とチーム内に向けた指示が、これほど違わない監督を見たことがない。裏表がなく、正直者。全員がついていく下地をつくった。

 J最多のタイトル20冠を誇る鹿島で強化責任者を務める鈴木満常務が教えてくれたことがある。「チーム状況を知るには、サブを見るといい」。いわく、タイトルを獲得するシーズンは紅白戦でサブ組が主力組を上回ることが多く、逆に無冠の年は、主力優位で練習が進むという。背景にサブ組の「チームに貢献したい」という気持ちを生む「正当な競争」があるか。

 広島の監督時代から、サブ組のマネジメントに気を配ってきた森保監督。選手が残す結果や練習姿勢に真摯(しんし)な采配を代表でも続ける。広島で指導を受けた者の中には「愛ある采配」という選手もいる。「一体感が高まって、チームとして自信を持って決勝Tに進むことができる」と同監督。サブ組が躍動する―優勝するチームの条件を整え、一発勝負のトーナメント戦に向かう。(内田 知宏)

サッカー

×