【二宮寿朗の週刊文蹴】「本田経由カタール行き」の是非

スポーツ報知

 ○○経由○○行き。

 U―23代表で臨む五輪はあくまで「経由地」であって、2年後のW杯こそが「目的地」なのだと言い表している。04年アテネ五輪代表の山本昌邦監督が当時「アテネ経由ドイツ行き」と語ったことで広く浸透するようになった。現在アジア大会に出場中のU―21代表は「東京経由カタール行き」を目指すことになる。

 この航路を「経由地止まり」で行こうとしているのが本田圭佑である。ロシアW杯直後にA代表引退を示唆し、インターネット番組においてOA(オーバーエージ)枠で東京五輪を目指すことを宣言している。

 このニュースを聞いて頭の固い筆者は早速ツッコミを入れたくなった。飛行機に乗るなら経由地で降りようとせず、みんなと同じ目的地を目指すべきじゃないのか、と。

 今回のOA枠は東京五輪への“スポット参戦”という位置づけではないはず。森保一監督が五輪代表とA代表を兼任するため、2つの代表をつなぐ重要な任務を担うことになる。五輪世代に溶け込み、彼らを引き上げていく存在。A代表で集まれる機会が少なくなっている今、五輪代表の活動を通して代表全体を底上げしていく担い手には「東京経由カタール行き」を目指す選手のほうがいいに決まっている。

 きっと本田はそのことも理解したうえで名乗りを上げている。たとえ自分だけが経由地で降りるにしても、それ以上に若いチームに大きな影響を与えることができるという自負があるからだろう。実際ロシアW杯メンバーである植田直通の欧州移籍を後押しするなど言動が若手に大きな刺激を与えているのは間違いない。

 現役とカンボジア代表GMを両立しようとする彼にとって、非常識に対する挑戦こそがモチベーションになっているように感じる。ナンセンスと思えることに対する反発。「東京経由」ならぬ「本田経由」は受け入れられるか、否か―。(スポーツライター)

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