【浦和】オリヴェイラ監督の魔法!12大会ぶり天皇杯Vで主要タイトル7冠

スポーツ報知
天皇杯で優勝して喜びを爆発させた浦和イレブン(カメラ・竜田 卓)

◆天皇杯全日本サッカー選手権 ▽決勝 浦和1―0仙台(9日・埼玉スタジアム)

 浦和が仙台を1―0で下し、前身の三菱重工時代を含め12大会ぶり7度目の優勝を飾った。前半13分にMF宇賀神友弥(30)がスーパーボレーで決めた先制点を守り切った。4月に就任したオズワルド・オリヴェイラ監督(68)は「魔法」と形容される人心掌握術でチームを再建。主要タイトル7冠目を獲得し、J1指導経験者の最多記録に。浦和は来季、2大会ぶりとなるアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場権を獲得した。決勝は例年元日に開催されるが、日本代表のアジア杯出場などで日程が前倒しされた。

 後半ロスタイムが表示の5分より長いと鬼の形相だったオリヴェイラ監督は、約束通り浦和に今季初タイトルをもたらすと、柔和な表情を浮かべた。「とても幸せな気持ちです。日本でとてもいい時間を過ごせてます。優勝することができ、関わった人におめでとうと言いたい」。5度宙を舞った。サポーターの大声援がこだまする埼玉スタジアムでの胴上げは心地良かった。

 「オズの魔法使い」。鹿島を率いた5シーズンで6冠を獲得した優勝請負人はこう称される。モチベーションを上げる術、チームを勝利に向かわせる術の引き出しは多い。決勝では負けたことがなく、この日も「伝家の宝刀」を抜いた。試合前のミーティングで選手全員の好プレー集を見せ、ピッチに送り出した。前半13分にMF宇賀神のゴールで先制。後半は押しこまれたが、整備した守備が機能。MF青木が左肘剥離骨折するなど、負傷者6人を抱える苦しい台所事情にも、93年のJ発足後初の快挙、天皇杯4戦連続完封勝利を演出した。

 4月に就任した。同時期に浦和に復帰し、指揮官を招へいした中村修三GMに来季のACL出場権獲得は「大丈夫」と告げ、チーム改革に着手した。ホーム戦は通常より1泊多い、Jクラブで異例の前々泊を導入。スタッフ陣が選手に付きっきりで治療を行えるメリットに加え、食事を共に取るなど結束力を高めた。

 J1最終節のF東京戦を終えた1日夜、サポーターが集う浦和駅近くの居酒屋「酒蔵 力」にいた。土田尚史GKコーチから「浦和の街を味わってほしい」と誘われ「行きましょう」と即答。約1時間半、飲み交わし「サポーターの力」を肌で感じた。5日の準決勝・鹿島戦と決勝の試合前日を非公開から公開し、その場でサポーター来場を呼びかけて一体感を作り上げた。

 この1週間、毎日ミーティングを行った。相手の分析などだけでなく「鹿島戦はオレの誕生日だから勝利をプレゼントしろ」と真顔で要求したと思えば「決勝の日は奥さん(の誕生日)」と笑顔で言う。仙台戦は4日に帰国した愛妻の36歳の誕生日。笑いが起き、緊張感の中にもリラックスさせた。

 来季は自信があるシーズン前のキャンプからチーム作りができる。「ワインが熟成されている途中。来季は非常においしいピノノワール(赤ワイン)が味わえるかもしれません」。浦和に3季連続タイトルをもたらした。名将は来季、12年ぶりとなる複数タイトルを目指す。(羽田 智之)

 ◆オズワルド・オリヴェイラ 1950年12月5日、ブラジル・リオデジャネイロ生まれ。68歳。サッカー選手としての経歴はなく、大学卒業後にフィジカルコーチとして指導者の道へ。99年にコリンチャンスの監督に就任し、2000年の第1回世界クラブ選手権(現クラブW杯)で優勝。07年から5季、鹿島の監督を務めリーグ3連覇など6冠を獲得。その後はボタフォゴ、サントス、パルメイラス、コリンチャンスなどを指揮し、今年4月に浦和の監督に就任した。J1通算100勝50分け45敗。

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