【浦和】柏木陽介手記、自己犠牲でV導いた 攻撃よりカバー13年目初の無得点

スポーツ報知
後半、鬼の形相で攻め込む浦和・柏木(カメラ・竜田 卓)

◆天皇杯全日本サッカー選手権決勝 浦和1―0仙台(9日・埼玉スタジアム)

 浦和が仙台に1―0で勝利し、7度目の優勝(三菱重工時代を含む)を飾った。今季、主将を務めたMF柏木陽介(30)はスポーツ報知に手記を寄せ、自己犠牲の精神を貫き、苦悩と葛藤の末につかんだタイトルを喜んだ。

 苦しい時期もあったけど、本当に良かった。自分の思い通りのプレーはできなかったけど、みんなに助けられた。今シーズン、中学3年生の時以来、15年ぶりにキャプテンを任された。最初は何をすればいいのか分からなかったし、自分のキャラクターを出せない苦しさがあった。アホなことをしたり、「だるい」とか「しんどい」とか、ネガティブなこともちょいちょい言いたいけど、我慢するようにした。思ったことをすぐ口に出すタイプやから結構しんどかった。

 俺が言って雰囲気を乱すのは一番悪い。キャプテンとしての言動を考え、めっちゃポジティブな声掛けを心がけた。ふてることも少なくなったし、そういうときこそ120%の力を出してやろうと思うようになった。鹿島との準決勝も勝ったけど、自分としては内容的にもどかしい部分は多かった。自分らしいプレーもできていない。でも勝てばいい。そう思ってやってきた。

 もう少しボールに触りたいし、いろんなところに顔を出したい。リーグ戦の13アシスト(ランキング1位)も9つがコーナーキック。流れの中でチャンスを作りたい。プロ13年目で初めて無得点に終わった。キャプテンだから、味方が(前線に)上がっていったら、俺はここはリスク管理して守らないとあかん、と攻撃参加しなかった。勝つために全力でカバーするとか、そういう係をやろうと決めていた。

 葛藤はあったし、ストレスを抱えていた。救われたのは伸さん(池田伸康コーチ)のひと言。準決勝の後、伸さんに「気持ち的にキツイよ」とこぼしたら「陽介、キャプテンだからって全部抱え込まなくていい。出せるときに出せよ」と言ってくれた。その言葉を待っていたのかもしれないけど、楽になった。来年はもっとオリヴェイラ監督と話をしてやっていきたい。

 来年、浦和に来て10年目になる。いいクラブだと思う。サッカーに集中しやすい環境を作ってくれる。サポーターがこれだけスタジアムに来てくれるクラブも他にない。本当にありがたい。タイトルを取り続けないといけない。将来、これまでレッズを作ってきた人と一緒に、このクラブをもっと良くしていきたい。

 1年間苦しかったけど最後にタイトルが取れた。少し大人にもなったと思う。人生の中でも忘れられない30歳になった。いろんな人に出会え、与えてもらい、助けてもらった。そして、奥さん(渚夫人)がいなければ今の俺はない。120%で自分のことより俺のことを優先してくれる。わがままで自由な人間やし、思うことはあるだろうけど許してくれる。でも、俺がダメすぎるときはしっかり言ってくれる。みんなに感謝しているし、いい報告ができるのがうれしい。(浦和MF)

 ◆柏木 陽介(かしわぎ・ようすけ)1987年12月15日、兵庫県生まれ。30歳。広島ユースから2006年にトップチーム昇格。07年U―20W杯に出場。10年1月に浦和移籍。日本代表は10年1月のアジア杯最終予選イエメン戦で初先発し、国際Aマッチ11試合出場。17年に制したACLでMVP。18年はJ1アシスト王(13アシスト)。J1通算366試合55得点。16年3月3日にTBSの佐藤渚アナウンサー(現在は退社)と結婚。

サッカー

×