【二宮寿朗の週刊文蹴】MAXのヒリヒリ感あってこそ“入れ替え戦”

スポーツ報知
J1参入プレーオフ決定戦に出場した中村俊輔

 ヤマハスタジアムに近づくと、10年前のヒリヒリ感が思い起こされた。

 2008年のJ1・J2入れ替え戦。ジュビロ磐田はJ2で3位に入ったベガルタ仙台をホームに迎えた。第1戦はアウェーで1―1引き分け。第2戦は2ゴールを挙げてリードしながらも終了間際に失点し、なおも猛攻を浴びた。追いつかれればアウェーゴール差でJ2降格となる。歓声と悲鳴が交差する中、耐えしのいで残留を決めたのだった。

 今回は落ち着くところに落ち着いたという感じだろうか。8日のJ1参入プレーオフ決定戦。磐田は東京ヴェルディに2―0で勝利して生き残った。勝ち点「41」を取りながらプレーオフに回ったJ1・16位と劇的な勝利の連続で勝ち上がってきたJ2・6位の間には実力差があり、妥当な結果ではあった。しかし、ヒリヒリ感に乏しかったゲームを見終わってみて「J1のホーム1試合、引き分け時の勝者扱い」は再考すべきだと思えた。

 最後の決定戦だけでもホーム&アウェーにするのがベスト。日程的にもう1戦組み込むのが難しいなら中立地にして「引き分けの勝者扱い」を取り外すことを考えてみてはいかがだろうか。

 J2勢はここにたどり着くまで2つ勝たなければならない(今回は4位の町田ゼルビアが昇格条件を満たさなかったために変則)。10年前までの入れ替え戦のように両者が同条件であっていい。

 個人的にはJ1・16位とJ2・3位、この2チームによる入れ替え戦の復活が最も望ましい形だとは思う。しかしながらJ2の興行的な側面を考慮すれば、多くのチームにプレーオフ進出の可能性を残す現状の方式の継続はやむを得ないとも感じている。それでも最後の決定戦だけは有利も不利もないほうがいい。両チームをがっぷりと組ませて選手、スタッフ、サポーターの総力を引き出してこそ、MAXのヒリヒリ感が生まれるのだから。(スポーツライター)

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