【二宮寿朗の週刊文蹴】VARで浮き彫りになったハンドの曖昧な基準

スポーツ報知
アジア杯のベトナム戦で行われたVAR判定

 故意か、故意じゃないか―。VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)を導入した先のアジア杯では、ハンドの判定について首をかしげてしまう場面があった。

 決勝のカタール戦、吉田麻也が空中戦の競り合いで左手に当たり、VAR判定によってPKとなったシーンだ。「故意じゃないでしょ!」と思わず声を上げた人も多いだろう。日本の追い上げムードをストップする痛い3点目であった。国際サッカー評議会(IFAB)の競技規則には「手または腕を用いて意図的にボールに触れる行為は手で扱う反則」と明記されている。ただ「ボールの方向への手や腕の動き」「予期していないボール」などが「考慮されなければならない」とも補足されてある。映像で見る限り、吉田のプレーは競りにいくために自然に上げた手が当たったという印象。「予期しないボール」だったことは映像でも理解できる。

 昨夏のロシアW杯決勝フランス―クロアチア戦でも似たような場面があった。フランスのCKをニアで合わせようとしたマチュイディを越えたボールが、追いかけてきたペリシッチの手に当たってVAR判定でPKとなった。状況を総体的に見ても、意図的と捉えるにはちょっと無理があるんじゃないかと感じたものだ。

 裏を返せば、意図的かそうじゃないか、そのどちらとも受け取れる可能性があるということ。VARが導入され、状況を確認できるというのに「PKでしょ」「いやいや違うでしょ」と両方の声が出てくること自体、あいまいな基準だと言わざるを得ない。

 Jリーグも今季からルヴァン杯の準々決勝以降、J1参入プレーオフ決定戦でVARを導入する。世界中の広がりを考えても、基準の見直しを検討する時期にある。基準は明確かつシンプルなほうがいい。「意図的」の解釈を限定するための新たな補足が欲しい。(スポーツライター)

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