水谷隼、気合「また、ここから強くなれる」…Tリーグ開幕まで、あと1か月

スポーツ報知
練習で鋭いボールを放つ水谷

 卓球の新リーグ「Tリーグ」は10月24日に男子、25日に女子が東京・両国国技館で開幕する。歴史的瞬間を1か月後に控え、男子の木下マイスター東京から参戦する16年リオ五輪団体銀、シングルス銅メダルの水谷隼(29)がインタビューに応じ「熱い試合を見せたい。1球目から最後の1本まで全力を尽くして戦う」と決意を語った。(聞き手・林 直史)

 ―1か月後、日本に初めてのプロリーグ(アマも混在型)が誕生する。

 「できたことに、まず大きな一歩を感じます。もともと08年ぐらいから『日本にプロリーグを』という話は聞いていて、そこから時間はたちましたが、いよいよスタートするんだなと実感してきました」

 ―以前から日本にもプロリーグが必要という考えを持っていた。その理由は。

 「08年は自分が大学生になって、これからの進路を考えていた時。社会人になって練習と仕事が半分になってしまえば、フルタイムで活動している海外の選手にかなうわけもなく、世界で戦うことは難しくなる。日本にはプロリーグがないので、みんな海外に出ていくんですよね」

 ―実際、中学2年からドイツに卓球留学。直近の5シーズンはロシアリーグでプレーした。海外生活で得たものも大きかったが、苦労も多かった。

 「一つは移動。欧州に移動すれば2日ぐらい無駄になる。強い選手と練習や試合ができるので、若い時はすごくメリットがあった。食事や時差、言葉の壁でストレスがあっても耐えられたけど、自分のレベルが上がって強くなってくると、その一番のメリットもなくなってきて。試合もすごく多いので、ほとんど練習ができない。特に秋から春にかけてはずっと調整練習みたいな感じでした」

 ―Tリーグに参戦し、日本が拠点となることで練習時間が確保できる。

 「1年のうち8~9か月は海外にいたのが日本になる。練習量が増えるので、またここから強くなれると思います。気持ちもすごく楽。移動や言葉、食事でストレスがたまると『卓球もういいかな』『休みたいな』みたいな気持ちも出てくる。これからはしっかり練習して、これだけやったんだから次の試合が楽しみだってなると思うんですよね」

 ―これまで経験してきたドイツ、ロシアなど海外と比べ、Tリーグの魅力は。

 「他のリーグよりも一つ一つのチームのレベルは圧倒的に高い。1年目ということもあって欧州は1人ですけど、韓国はトップ2人が来るし、香港や台湾もトップの選手。アジアでは非常にレベルの高い選手が来てくれた。卓球人気も日本が一番あると思うので、選手はやりがいを感じられるんじゃないかと思います」

 ―卓球人気はドイツなど欧州も高い。

 「ブンデスももちろん盛り上がるし、(名門)デュッセルドルフは卓球人気がすごい。それでも国として日本の方が認知されてきている。ただ、ブンデスの場合は地域密着型。ファンの方がすごく声援をして、選手の力になってくれる。Tリーグはまだそういうところがないので、そこが今の課題だと思います」

 ―木下マイスター東京は今年の世界選手権の日本代表が4人そろい、優勝候補の本命に挙げられている。

 「団体戦は強い選手が1人いて、2点(2勝)取っちゃえばというところはあるので、そういう意味ではそんなに差はない。確かに層は厚いけど、優勝筆頭候補かと言われたら、全然そんなことはないと思っている。どこのチームにも世界のトップで戦っている強い選手がいる。プレーオフの一発勝負なら何があるか分からないと思ってますね」

 ―その中で初年度優勝への思いは。

 「初代王者になりたい気持ちは強いですし、初代だけじゃなく、Tリーグがある限りずっと、自分のチームが優勝できるようにベストを尽くしたい」

 ―1月の全日本選手権で決勝を戦った張本智和(15)とは同じチームになる。

 「自分も見て勉強できることはたくさんある。彼の場合は成長スピードが著しいので、一試合一試合、成長を感じられると思う。どこが良くなったかを見るのもすごく楽しみですね」

 ―新リーグを盛り上げるために選手ができることは。

 「いいパフォーマンスをすることが一番だと思っているので本当に熱い試合を見せたいですよね。ワールドツアーの1回戦で相手が弱かったりすると、ちょっと力を緩めても勝てるなみたいな感じになってしまうけど、Tリーグでは1球目から最後の1本まで全力を尽くして相手と戦いたい」

 ―レギュラーシーズンは10月から来年2月まで。長丁場の戦いでコンディションを保つ難しさもある。

 「試合はいつも違う場所でやるので、来てくださる方も初めての方が多くなる。僕らは何回も試合をするけど、見に来てくれる方は初めてなので、常に一番いいパフォーマンスをしていきたいし、そのための準備をしっかりしたい」

 ―ファンに向けて。

 「卓球をテレビで見たことはあっても、生で見たことがある人は少ないと思うんですよね。生の迫力、選手の息遣い、ボールの音はテレビと全然違うと思う。卓球のすごさ、迫力、ピッチの速さ。そういうのを体験してほしい」

 ―これまで国内でトップ選手の試合を見る機会は年に2~3大会程度だった。

 「卓球界にとってもすごくいいこと。自分たちがやってきたこと、努力してきたことを見ていただければ評価される自信はあると思っています。でも、その機会があまりにもなかった。それがリオ五輪で見ていただいて評価された。見ていただければ、何かを感じてもらえる自信はある。ぜひ一度、見てほしいと思いますね」

 ◆水谷 隼(みずたに・じゅん)1989年6月9日、静岡・磐田市生まれ。29歳。5歳で卓球を始め、青森山田中2年でドイツへ留学。2005年世界ジュニア準優勝。全日本選手権は歴代最多の9度優勝。16年リオ五輪では個人種目で男女を通じて日本勢初の銅メダルに輝き、団体でも銀メダルを獲得。17年3月に木下グループと所属契約を結んだ。172センチ、63キロ。左利き。家族は夫人と1女。

 ◆Tリーグ・アラカルト

 ▼参加チーム 男女4チームずつ。男子はT.T彩たま、木下マイスター東京、岡山リベッツ、琉球アスティーダ。女子は木下アビエル神奈川、TOP名古屋、日本生命レッドエルフ、日本ペイントマレッツ

 ▼選手数 1チーム6人以上で、世界ランク10位以内相当の選手1人以上との契約を義務付け

 ▼日程 レギュラーシーズンは18年10月~19年2月まで。7回戦総当たりで各チーム21試合(ホーム9試合、アウェー9試合、セントラル3試合)。3月に上位2チームによるファイナルを行い、勝者が優勝

 ▼試合形式 団体戦でシングルス3、ダブルス1の計4マッチで構成。1人2試合まで(シングルスは1試合)。シングルスは5ゲーム、ダブルスは3ゲームマッチで、最終ゲームは6―6からスタート。2勝2敗で並んだ場合、1ゲーム(11ポイント)マッチの延長戦を行う

 ▼年間順位 1試合の勝敗(マッチカウント)に応じて勝ち点をつけ、勝ち点の合計によって決める

 ▼出場規定 選手を4つのランクに分け、Sランクは直近2シーズン以内に世界ランク10位以内を経験、AAAランクは同20位以内などと規定。すべての試合日にAAA以上の選手、また日本人選手が1人以上出場することなどが必要

 ▼チケット ローソンチケット、イープラス、CNプレイガイドで購入可能

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