【箱根予選会】「中大」関口と「焼き肉」舟津 新旧主将率いる名門が8位通過

スポーツ報知
箱根駅伝予選会で左腕に「焼肉」と書き込み、力走した中大の舟津

◆報知新聞社後援 第95回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝=来年1月2、3日)予選会(13日、東京・立川市の陸上自衛隊立川駐屯地スタート、国営昭和記念公園ゴール=21・0975キロ)

 第95回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)予選会が13日、東京・立川市の陸上自衛隊立川駐屯地スタート、国営昭和記念公園ゴールの21・0975キロで行われた。各校の上位10人の合計タイムで競い、11位以内の大学が本戦(来年1月2、3日)の出場権を獲得した。結果は以下の通り。

 〈1〉駒大

 〈2〉順大

 〈3〉神奈川大

 〈4〉国学院大

 〈5〉明大

 〈6〉東京国際大

 〈7〉大東大

 〈8〉中大

 〈9〉国士舘大

 〈10〉山梨学院大

 〈11〉上武大

 麗沢大は1分50秒差の12位で惜しくも落選した。

 前回優勝の青学大などシード10校、予選会通過11校に加え、陸上関東学生男子1部の14~18年の5大会で総合得点が最多の大学に出場権が与えられる「関東インカレ成績枠」の日大、オープン参加の関東学生連合の計23チームが新春の箱根路に臨む。

 白地に赤のC。伝統のユニホームが秋の立川を力強く駆け抜けた。堀尾謙介(4年)、中山顕(4年)、舟津彰馬(3年)ら主力を中心に盤石の布陣で臨んだ中大が8位で通過。2年連続92回目の本戦出場を決めた。

 一昨年は88大会ぶりに本戦出場を逃す歴史的敗戦を喫し、昨年は3位通過で復活。最近、予選会の主役となっている中大は、今季も熱いドラマを展開して「箱根への道」を切り開いた。

 チームを揺るがす“事件”は、全日本大学駅伝(11月4日)の関東選考会が行われた6月30日に起きた。

 1万メートル4組に分かれ、各組に各校2選手が出場。計8人の合計タイムで争い、上位8校が本戦の出場権を獲得する競技方式で行われたが、第1組で関口康平主将(4年)が残り450メートルで熱中症で痙攣(けいれん)し、途中棄権。早々と敗退が決まった。その日、関東地方は梅雨明けし、会場のさいたま市の最高気温は33・8度。第1組スタートの午後5時30分の時点でも30度以上の暑さが残るタフな条件だった。

 ハーフマラソンに12人が出場し、上位10人の合計タイムで競う箱根駅伝の予選会は2人まで大ブレーキしても本戦出場の可能性が残るが、全日本大学駅伝の関東選考会では1人のブレーキが致命傷になる。ましてや、途中棄権なら、その場で終戦となる。事実上の「消化試合」となった第2組に出場した舟津は31分38秒53で23位と失速。「正直、気持ちが切れてしまった。何で走っているのだろう…と。自分の心が弱いだけなんですが」と自省を込めて話した後、関口主将のミスに対して言及。「キャプテンがレースを抜けるとはあり得ない。選手はトレーナーから再三再四、水分を多く取るようにと指示を受けていた。(途中棄権は)避けられることだった」と指摘した。

 1、2年時に異例の主将を務めたほど気持ちが強い舟津は、チームの飛躍と発展のために遠慮せず、厳しい言葉を発した。ただし、言葉が強すぎた。「そこまで言うべきではない、と舟津に注意しました」と藤原正和監督(37)はたしなめたという。副将の中山も「気持ちの強さが舟津の持ち味ですが、あまりに言葉が強すぎると、下の選手はやる気を失ってしまう危険がある」と心配した。

 今年の箱根駅伝を15位で終えた後、名物キャプテンの舟津が退任。後任に就いたのが関口だった。「舟津は一選手として競技に集中し、日本トップクラスを目指してほしい。関口は一般入試を突破して入部した努力家で視野も広い」と藤原監督は新体制について説明した。

 関口は千葉・幕張総合高から1浪の末、一般入試を突破して中大駅伝チームの門をたたいた。ただ、当初は伝統の「C」のユニホームの着用が許されない準部員。「1年生の春は体重がベストより10キロ以上も重い67キロあった。1キロ5分のジョギングのペースでも3キロで離されていた」と入学直後の苦闘を振り返る。それでも「絶対に箱根駅伝を走る」という強い思いを抱き続け、3年時には予選会、本戦ともに登録メンバー入りするまで成長した(出走はなし)。

 関口は、藤原監督や中山の心配りに感謝しながらも、学年で1つ、年齢では2つ下の舟津の厳しい指摘を正面から受け止めた。「舟津の厳しい言葉は競技者として当然のこと。素直に受け入れました」と話す。7月いっぱいは熱中症の影響で練習ができなかったが、8月から地道に走り込み、成長。今回の予選会には初めて出走した。左腕に「中大」と書き込んで力走。全体169位、チーム内9位で8位通過に貢献した。

 関口の健闘に舟津は最大限に敬意を表した。「主将は大変なことが多いですけど、関口さんは頑張っています。信頼しています」と話した。その舟津が左腕に書き込んだ文字は「焼肉」。舟津は「走り終わったら、みんなで焼き肉に行きたい!と思って書きました」と笑った。

 努力型の関口主将と熱血漢の舟津前主将。タイプのことなる2人のリーダーが率いる中大は名門復活の階段を確実に上っている。本戦では7年ぶりのシード権(10位以内)獲得を狙う。

 優勝(14回)、連続優勝(6回)、出場(92回目)、連続出場(87回)の最多記録4冠王。大正、昭和の箱根駅伝を颯爽と駆け抜けた中大が平成最後の箱根駅伝でどんな戦いを見せるのか―駅伝ファンは注目している。

 ◆中大陸上部 1920年創部。箱根駅伝には1920年、1924年、2017年の3回を除き、すべて出場している。優勝(14回)、連続優勝(6回)、出場(92回目)、連続出場(87回)は大会最多を誇る。出雲駅伝と全日本大学駅伝は2位が最高(いずれも3回)。タスキの色は赤。主な陸上部OBは1999年セビリア世界陸上男子マラソン銅メダルの佐藤信之(現亜大監督)、2016年リオ五輪男子400メートルリレー銀の飯塚翔太(現ミズノ)ら。大学OBはプロ野球・巨人の阿部慎之助ら。

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