ラグビー聖地「秩父宮」で55年ぶりサッカー!F東京が来春ルヴァン杯で使用検討
ラグビーの聖地として知られる秩父宮ラグビー場(東京・港区)で、1964年の東京五輪以来55年ぶりにサッカーの試合が行われる可能性が12日、浮上した。J1・F東京が来季のルヴァン杯で使用することを検討しており、すでにJリーグと共に現地調査も実施。本拠地の味の素スタジアム(東京・調布市)が、19年のラグビーW杯に向けた大規模改修工事を行っており、平日に使用できないことから候補に浮上。Jリーグが行われれば史上初めてとなる。
ラグビーの聖地が、サッカースタジアムに変貌する。F東京が秩父宮ラグビー場で、来年3月から5月にかけて行われるルヴァン杯1次リーグの開催を検討していることが判明。すでにJリーグと共に現地でヒアリングを実施。照明の明るさなど基準を満たしていない点はあるものの、リーグは特例で開催を検討している。ラグビー協会との日程の調整さえつけば、同競技場で史上初めてJリーグが行われることになる。
1947年にラグビー専用競技場として誕生した秩父宮は、日本代表やトップリーグ、大学ラグビーなど、日本ラグビーの中心地として親しまれてきた。だが64年の東京五輪ではサッカー会場として利用され、準決勝(ハンガリー6○0アラブ連合共和国)をはじめ5試合が行われた。12年にはU―20女子日本代表が練習場として使用したことはあるが、試合開催となると、東京五輪以来実に55年ぶりとなる。
今回の背景には東京都のスタジアム不足がある。F東京の本拠・味の素スタジアムは、来秋のラグビーW杯で日本対ロシアの開幕戦など最多8試合を開催する。大会期間中の会場探しも大問題だが、現在すでに改修工事がスタート。来春も週末は開催できる見込みだが、平日は使用不可となる。
ルヴァン杯は平日ナイターに行われるのが通例。F東京の今季の同杯での本拠平均観客数は7258人とリーグ戦(2万6432人)に比べ少ないが、約2万人収容の駒沢陸上競技場は照明設備がなく、味の素フィールド西が丘の収容人数は約5000人止まり。会場を探していたところ、約2万5000人収容の秩父宮が候補に浮上した。
この時期は週末にサンウルブズの試合が組まれるなど日程調整は簡単ではないが、ラグビー界も協力的な姿勢を見せている。東京五輪以来、そしてJ史上初となる秩父宮でのサッカー開催の可能性は十分にありそうだ。
◆花園は99年にJ 〇…ラグビーの聖地として全国高校ラグビー大会の会場にもなる大阪の「東大阪市花園ラグビー場」でも、Jリーグが1試合だけ開催されたことがある。1999年5月8日のJ1・C大阪―名古屋戦で、C大阪のホームスタジアム・長居陸上競技場が、陸上の国際グランプリ大阪大会で使用できなかったための措置。試合はストイコビッチの2ゴールで名古屋が2―1で勝ち、敗れたC大阪の選手からは「全然、ホームのメリットがない」と不満も聞かれた。観衆は9865人だった。
◆秩父宮ラグビー場
▼沿革 1947年11月に「東京ラグビー場」として開場。関東協会を中心に候補地を探して資金を集め、建設作業にラガーマンも協力した。53年に日本ラグビー協会名誉総裁だった秩父宮雍仁親王の崩御を受け、秩父宮ラグビー場に名称を変更。62年に日本ラグビー協会から国立競技場(現日本スポーツ振興センター)に運営が移管された。
▼サイズ 芝生面積は1万515・5平方メートル。ラグビーの国際試合は100メートル×70メートル(7000平方メートル)で行われ、Jリーグ規約は原則105メートル×68メートル(7140平方メートル)と定められている。
▼聖地 主にラグビーの国際試合、日本選手権、トップリーグ、大学選手権、関東大学リーグ戦、対抗戦などに利用され、89年に日本代表がスコットランド代表から大金星を挙げるなど数々の名勝負の舞台に。
▼使用例 他競技、他目的の開催はほとんどない。64年東京五輪でサッカー会場として使用し、2013年に人気アイドルグループ・NEWSが史上初めて単独コンサートで使用。今年7月には女性アイドル・乃木坂46も開催した。
▼特徴 グラウンドと観客席が近く臨場感を味わえる。特にバックスタンドはフェンスが低く、ラグビーの試合後はファンが選手と一緒に「自撮り」を楽しんでいる。