神戸製鋼、18季ぶり日本一「我々はスチールワーカーの代表」チーム改革で平尾さんに捧げるV

スポーツ報知
18季ぶりの日本一を喜ぶ神戸製鋼フィフイーン(カメラ・佐々木 清勝)

◆ラグビー 日本選手権兼トップリーグ決勝トーナメント決勝 神戸製鋼55―5サントリー(15日、秩父宮ラグビー場)

 決勝で神戸製鋼がサントリーを55―5で下し、18季ぶり最多10度目の日本選手権V、15季ぶり2度目のトップリーグ(TL)制覇を達成した。11、15年W杯を連覇した元ニュージーランド(NZ)代表アシスタントコーチで、今季から2年契約で就任したウェイン・スミス総監督(61)がチーム改革に成功。16年10月に胆管細胞がんで死去した元GMの平尾誠二氏(享年53)へ優勝を届けた。

 日本一を奪回した神鋼の選手が次々と抱擁して喜びを爆発させた。湧き上がるのは“チームの顔”だった平尾氏への思い。共同主将の前川は表彰台で平尾氏の遺影を掲げ「やりましたよ、という思いだった」と感無量の面持ちだった。

 左頬骨骨折から復帰した日本代表FB山中が2トライ。11年にひげ育毛剤でドーピング違反となり退部したが、平尾氏の尽力で会社に残り、部に復帰できた恩がある。「(社業専念の期間も)週1回ぐらいランチに連れて行ってもらった。平尾さんは僕にずっと期待してくれていた。最高の気分」と、かみしめた。

 前半3分、ボール奪取からつなぎ、カーターからパスを受けたウィングのアンダーソンがノーホイッスルでの先制トライ。その後もキックをほとんど蹴らずに展開した。後半は5トライを追加。社会人チーム同士の日本選手権決勝では最多の55得点、最大の50点差で完勝した。

 平尾氏と旧知の名将が復活に導いた。91年にワールドで臨時コーチ、最近では神鋼と提携するチーフス(NZ)のコーチを務めたスミス総監督は就任後、共同主将制の導入などで複数リーダーを育成。キックで前進を図った昨季から、自陣でも果敢にパスを回すNZ代表のようなアタッキングラグビーに変えた。

 昨季の神鋼戦の映像を見て「倒れてから起き上がるまでが遅すぎる。その速さこそチーム愛だ」と力説。選手のリスタートは目に見えて速くなり、ブレイクダウン(ボール争奪戦)を次々と制圧。リーグ紅組で全7試合353得点と、他チームに100得点以上もの差をつけた。

 「我々はスチールワーカー(製鋼所工員)の代表だ」と会社あってのラグビー部を選手に自覚させるため、共に工場を見学し会社や創部90年の歴史を勉強した。福本正幸チームディレクター(TD、51)は「腐りがちだった控え選手の目の色が変わった」。Bチームが対戦相手の戦術を演じ切った実戦練習は熱を帯び、Aチームは白星街道を走り切った。本社では昨秋に製品データ改ざんが発覚して暗い話題が先行したが、日本代表プロップ山下は「社員として明るいニュースを発信できたことがうれしい」と笑った。

 19年9月にW杯日本大会、20年1月に来季のTLが開幕する。「W杯を目指す。カップ戦など神鋼で一戦一戦、結果を残したい」と山中。平成元年の88年度(89年1月)に初の日本選手権制覇を果たし、平成最後の今大会を制した。平尾氏がいたV7時代と同様に、再び世界を目指していく。(田村 龍一)

 ◆ウェイン・スミス 1957年4月19日、ニュージーランド(NZ)生まれ。61歳。現役時はNZ代表SOでキャップ17。97年からスーパーラグビー(SR)のクルセイダーズでヘッドコーチ(HC)を務め98、99年連覇。00~01年NZ代表HC。01~04年、英ノースハンプトン・セインツHC。04~11年NZ代表AC。12~13年チーフスAC。15~17年NZ代表AC。今季から神鋼で総監督。

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