15歳・張本智和、男女通じ最年少V「最高としか言いようがない」観戦の母に感謝も

スポーツ報知
張本智和

◆卓球 ワールドツアー・グランドファイナル最終日 ▽男子シングルス決勝 張本智和4―1林高遠(16日、韓国・仁川)

 【16日=林直史】男子シングルスで世界ランク5位の張本智和(15)=エリートアカデミー=が同4位の林高遠(中国)を4―1で破り、初優勝を飾った。15歳でのグランドファイナル制覇は2004年の女子・郭躍(中国)の16歳を更新し、男女を通じて史上最年少。今年は1月の全日本選手権で最年少王者となり、自身で「山あり谷あり。大きく動いた1年」と語った2018年最後の大会も最年少優勝で締めくくった。

 張本が世界の猛者たちの頂点に立った。9―9からリスクを恐れず、林高遠のフォアハンド側に強烈なチキータを2連発。ノータッチでぶち抜くと、両手で顔を覆った。ツアーの年間成績上位者だけが出場できる大会を史上最年少の15歳172日で制し「優勝してこんなに息が上がるのも、興奮することもなかった。それぐらいプレッシャーがあったし、勝った時は一番ホッとした。最高としか言いようがないです」。雄たけびも、派手なガッツポーズも胸の中に押しとどめ、静かに喜びをかみしめた。

 2018年は1月の全日本選手権を史上最年少で制し、幕を開けた。アジア杯やジャパン・オープン(OP)荻村杯では馬龍、樊振東、張継科と中国のトップ選手を撃破。強烈なインパクトを残した一方で、「今年1年、本当に悔しい思いをたくさんしてきた」と振り返る。6月のジャパンOP荻村杯以降は無冠で、主将を務めた10月のユース五輪はシングルス、団体ともに銀メダル。“五輪”と名の付いたタイトルを逃し、大きなショックを受けた。

 大会後、周囲から「相手よりミスしないことが強みだろう」と諭された。自分から決めにいくだけではなく、つなぐボールや駆け引きも大事にした。考え方に加え、フィジカル面でも1年前に172センチだった身長は3センチ伸び、体重は2キロ増え65キロ。ウェートトレーニングにも積極的に取り組み、夏から始めたベンチプレスは20キロから40キロにアップ。15キロの重りを持ち、片方の足を台に乗せてのスクワットも欠かさない。体がひと回り大きくなったことで、「プレーでもぶれる幅が減ってきた」と安定感が増した。

 スタンドには仙台市に住む母・凌さんが海外の大会では初めて応援に訪れていた。「優勝を見せたいと思っていたけど、こんなにすごいものが見せられて、自分でもびっくり。お母さんが来てくれて優勝できたのも何かの縁。一番感謝してます」。試合後は母の姿を探して花束を渡し、抱擁を交わした。中学1年から東京で暮らす15歳にとって、最高の親孝行にもなった。

 ◆1130万円獲得 ○…張本は優勝で賞金10万ドル(約1130万円)を手にした。使い道は「貯金です。せめて自分が19、20歳になるまで、全て貯金だと思います」。母・凌さんは妹・美和と仙台市で暮らすため、頻繁に会う機会がなく「背がすごい伸びてびっくりした。技術も気持ちも前よりすごく安定した」。現地で見守った父でコーチの宇さんは「もう本当に最高。試合前はプレッシャーもあったと思うが、勝ちたい気持ちを持っている」とたたえた。

 ◆張本の主な最年少記録

 ▼世界選手権 17年に13歳11か月で出場し、2回戦で水谷隼を4―1で撃破。史上最年少で8強入りを果たした。

 ▼ワールドツアー 17年8月のチェコOP決勝で、元世界1位のティモ・ボル(ドイツ)に勝利。伊藤美誠が持っていた14歳152日を塗り替え、男女を通じてツアー史上最年少となる14歳61日で優勝。

 ▼全日本選手権 18年1月、14歳208日で男女を通じ、史上最年少優勝。決勝では4連覇中だった水谷隼を4―2で下した。

 ▼世界ランク 18年5月に10位を記録。14歳10か月でのトップ10入りは、男子として史上最年少。

 ▼ジャパンOP荻村杯 準々決勝で16年リオ五輪王者の馬龍、決勝で12年ロンドン五輪王者の張継科(ともに中国)と2人の五輪金メダリストを撃破し、大会最年少優勝。

 ◆優勝記録アラカルト

 ▽最年少 これまでシングルスは2004年の女子・郭躍(中国)の16歳が最年少で、ダブルスも含めれば14年の平野美宇、伊藤美誠組の14歳だった。

 ▽シングルスの日本勢 水谷隼が10、14年、石川佳純が14年に制しており、張本で3人目。

 ▽複数種目V 14年の水谷、石川と平野、伊藤組以来2度目。当時は中国勢が出場していなかっただけに、今回はより価値が高い。

 ◆張本 智和(はりもと・ともかず)2003年6月27日、仙台市生まれ。15歳。元選手でコーチの父・宇さん、1995年世界選手権の中国代表の母・凌さんの影響で2歳から卓球を始める。小学1年から全日本を世代別7連覇し、16年世界ジュニア選手権優勝。初出場した17年世界選手権個人戦は8強。18年全日本選手権優勝。妹の美和(10)も卓球選手。

スポーツ

×