明大のOB・松尾雄治氏“北島イズム”語る「真のラガーマンだ」

スポーツ報知
スタンドの応援団とともに勝利を喜ぶ明大フィフティーン(カメラ・生澤 英里香)

◆大学ラグビー ▽決勝 明大22―17天理大(12日・秩父宮)

 1972年度に明大を大学選手権初優勝に導いた元日本代表SOでスポーツ報知評論家の松尾雄治氏(64)が、優勝した後輩たちの根底に流れる“北島イズム”について語った。

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 北島忠治先生の教えでもある明治の「前へ」の精神はだれもが知ってると思う。大学選手権で準優勝した昨年度から、この2年間の明治を見ていて思い出したのは、明治で学んだ一番の教え「真のラガーマンであれ」だった。

 北島先生を家から自宅まで車で送った時のことだ。助手席にしか座らない人でさ。出し抜けに言ったんだ。「おい、雄治! 本当のラガーマンって知ってるか!?」と。「1軍で頑張っていて、お前はえらい!」と言われるもんだなと思っていたら、「一度もレギュラーになれないのに、一度も練習を休まず4年間ひたすらチームのために頑張ってきたヤツこそ、真のラガーマンだ」って言われてさ。ビックリしたよ。

 「グラウンドに出たら全員がレフェリーであれ」「寮生活は全員がキャプテンであれ」とも教えられた。体罰は絶対に許さなかったし、相手が走る方向を妨害するようなライン取りや、ラインアウトで相手の足を踏むなどのルール違反や、ひきょうな行為も許さなかった。基礎技術を忠実に実践するという、ラグビーの根幹なんだ。

 前回の優勝から22年。低迷した理由は勝ち負けじゃない。こういう原点を忘れていたからなんだ。明治にいれば勝てるとか、ザルのような気持ちでラグビーをやってたのかなと。人間はあぐらをかくとダメになる。たばこを吸ったり掃除もしなくなり、それがいつの間にか当たり前のようになって。世の中をナメていたんだろうな。個々の実力は高くても詰めの甘いチームに成り下がってたんだ。

 自分は2年までSHで、このポジションで日本代表も頑張るか! と思ってた矢先に3年でSOに転向させられてね。辞めようかと相当悩んだ。それでも北島先生は「自分のことは関係ない」と言うし、ラグビーしかなかったから続けた。で、75年度に日本選手権で初優勝。その時、思ったよ。北島先生は一人一人をしっかり見ていてくれて、その良さを引き出す神様なんだなと。

 「真のラガーマンであれ」。これって社会生活でも通じる本当に深い言葉だよ。誰にでも役割がある。個々の実力は高くても、結束する力がなければ「前へ」とはいかない。さんざん失敗してきた俺が言うんだから、間違いないよ。(元日本代表SO)

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