ジュニア女王・出沢は伊藤に敗れるも、「粒高ラバー」で大躍進

スポーツ報知
出沢杏佳

◆卓球 全日本選手権第5日(18日・丸善インテックアリーナ大阪)

 ジュニア女子を制した出沢杏佳(16)=茨城・大成女子高=が、シングルス6回戦で昨年優勝の伊藤美誠(18)=スターツ=にストレート負けを喫した。5回戦ではシードの前田美優(22)=日本生命=を4―2で退け、念願だった伊藤との対戦が実現。しかし、終始押される展開に「全然相手にならなくて…。やりたいことをさせてもらえないまま終わってしまった。実力不足です」と唇をかんだ。

 それでも、優勝候補を次々と破って頂点に輝いたジュニア女子に続いて、シングルスでも社会人の有力選手に立て続けに勝利した。16強入りの大躍進で、来年のシード権も獲得。初めてだらけの全日本を終え「今までは(シード権のかかる)ランク決定戦で負けてしまうことが多かったけど、いきなり優勝できて初めての雰囲気が分かりました。次はその雰囲気に飲まれないように試合をしていきたい」と前を向いた。

 兄の影響で、小1で「日立大沼卓球」で競技を始めた。その練習初日、出沢がプレーする姿を見た小貫美穂子コーチ(80)は驚いたという。「ひざが曲げられなくて、真っすぐ突っ立っていた。運動神経のなさにビックリした」。新品のラケットを持ってきていたが、通常のラバーでは難しいと判断した小貫コーチがそのラバーをビリビリとはがし、突起の長い粒高(つぶだか)ラバーに付け替えた。使っている選手が少ない戦型のため、今大会では相手選手がことごとく苦戦。ピンクのニット帽をかぶって毎試合ベンチで見守った小貫コーチも「言ったことをちゃんとやってくれた」と教え子の成長と活躍に目を細めた。

 出沢は「自分の戦型がいなかったので、今回はたまたま上がれた。これから対策されると思うので、対応できるようにまたイチから練習したい」と謙虚に振り返ったが、粒高を武器に強烈な爪痕を残したことは確かだ。次なる課題にはフットワークの強化を掲げる。「フォアに動かされた時に全然取れなかった。また伊藤選手と試合ができるように練習を頑張って、試合ができたら思い切っていきたい」。素朴な雰囲気が魅力的な16歳は、静かにリベンジを誓った。

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