水谷隼、前人未到10度目Vで全日本選手権“卒業”宣言

スポーツ報知
強烈なスマッシュを放つ水谷隼(カメラ・渡辺 了文)

◆卓球 全日本選手権最終日 ▽男子シングルス決勝 水谷4―2大島(20日・丸善インテックアリーナ大阪)

 男子シングルスは水谷隼(29)=木下グループ=が2年ぶり10度目の優勝を果たした。準決勝で木造勇人(19)=愛知工大=に4―1、決勝で大島祐哉(24)=木下グループ=に4―2で勝利した。自身が持つ最多優勝記録を塗り替え、全日本選手権は“卒業”することを宣言。今後は2020年東京五輪に向け、国際大会などで若手の壁となることを誓った。2連覇を狙った張本智和(15)=エリートアカデミー=は準決勝で大島に3―4で敗れた。

 水谷から仰天の発言が飛び出した。前人未到のV10を成し遂げ、「自然とありがとうという気持ちで」と観客席の熱烈な主婦のファンのグループに向かってダイブ。その場でユニホームを脱いでプレゼントした後、優勝インタビューで「この全日本で最後だと決めていた。勝って、この舞台を去りたい」と突然の卒業宣言。場内は騒然となった。

 16年リオ五輪で一度は引退を考え、歴代最多の9度目の優勝を飾った17年大会の頃からモチベーションの維持が難しくなっていた。周囲から当たり前のように優勝を期待される中で、若手が台頭。昨年は当時14歳の張本に王座を奪われた。「張本に負けてからこの1年、絶対優勝するぞと思ってやってきた。始まる前から10回優勝したら満足。日本でラケットを振るのはもう無理なんじゃないかという気持ちだった」。実際に頂点に返り咲いても、「自分の中での全日本への思いがぷつんと切れた」と決意は揺らがなかったという。

 13年連続で決勝の舞台に立ち、誰よりも全日本を知る29歳の戦いぶりは盤石だった。“死のゾーン”となった厳しい組み合わせの中で丹羽孝希らを下し、最終日も勢いのあった木造、大島を勝負所で上回った。張本が19日の男子複Vインタビューで「木造さんが決勝に来ると思う」と発言したことにも闘志をかき立てられた。「他の大会で負けても、全日本は負けない」と自負をのぞかせた。

 日本代表での活動にも東京五輪で区切りをつけるつもりだ。だが、そこまでは「若手の壁になりたい」と言い切り、男子代表の倉嶋洋介監督も「張本1人じゃないというところを見せてくれた」と改めて存在の大きさを語った。ナショナルチームの合宿では最先端の高速卓球に対処するため、張本ら若手と積極的に打ち合う。「もっと自分は強くなりたい」。全日本は卒業しても、進化を止めるつもりはない。(林 直史)

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