錦織圭、5時間5分の死闘で大逆転8強「試練だった」

スポーツ報知
錦織vsカロビッチの得点経過

◆テニス 全豪オープン第8日 ▽男子シングルス4回戦 錦織3―2カレノブスタ(21日・メルボルン)

 【21日=大和田佳世】男子シングルス世界ランク9位で第8シードの錦織圭(29)=日清食品=が、4回戦で同23位のパブロ・カレノブスタ(27)=スペイン=に0―2から3セットを奪い返し、自身最長となる5時間5分の激戦を制した。4大大会通算10度目の準々決勝進出で、18年全米オープンに続き大坂なおみと日本勢シングルス男女同時8強。23日予定の準々決勝では初の4強入りをかけて14連敗中の天敵、ノバク・ジョコビッチ(31)=セルビア=と対戦する。

 錦織は、残りわずかな体力を振り絞って右腕を振った。今季から導入された最終セット10点先取のタイブレイク。9―8のマッチポイントから191キロのサービスエースで決めた。この日15本目のエースにも、喜ぶ元気はない。「エースで終わるのは気持ち良かった。言葉にならない。試練だった。集中しすぎていて、5時間だったと聞いてビックリした」。今大会、そして自身最長5時間5分の大激戦を制して、4大大会通算10度目の8強入り。スタンドのマイケル・チャン・コーチも感極まっていた。

 1時間16分に及んだ第1セットをタイブレイクの末に奪われ、第2セットも落とした。第3セットも「自分が悪くて相手がいい。いけるな、というのがない」ままだった。それでも必死に腕を振って2セットを奪い返し、今大会3度目のフルセットに突入した。1ゲームをブレイクした5―4から「落とすと思っていた」という悪夢が的中し、タイブレイクを迎えた。

 互いに体力が限界に近づいて足が動かなかった。リターンが合わず5―8まで追い詰められた。「やばいな、と思った。第1サーブが入れば何とか…」。ワイドに入れてネット前に出た。ラリーの4球目がネットに当たって入り、空いたスペースに返して6―8。しかし錦織が返す前に線審の「アウト」判定を聞き左に動いていたカレノブスタは、ポイントのやり直しを要求した。ビデオ判定でインだと認められ錦織にポイントが入った。絶体絶命のピンチをしのいだ。主審に文句を言って荒れる相手をよそに、錦織は「集中していた」。じっくりラリーを展開して相手のミスを誘い、5ポイント連取の大逆転に成功。最終セットの勝率は歴代最高76・2%という勝負強さを見せつけた。

 初めて遅い時間での試合。夜風が肌寒いスタンドから、1ポイントごとに「頑張れ」「カモン」と声が飛び、立ち上がって拍手をするファンの応援が、疲労困憊(こんぱい)の体を突き動かした。その中には日本テニス協会の盛田正明名誉会長(91)もいた。私財を投じてファンドを設立し、年間数百万円もかかる米国のIMGアカデミーへの留学を5年間も支援してくれた恩人は「最後まで見て良かった」と優しい笑みを浮かべた。

 全豪では準々決勝で3回全て敗退。最大の“鬼門”では14連敗中で世界1位のジョコビッチと激突する。勝つ自信を問われ「え~、分かりません」と笑顔でかわした。初めて3試合の5セットを勝ち抜き、ここまで13時間38分も戦い続けた疲労はある。初の4強へ、今回こそ壁を破ってみせる。

 ◆テニスの最長試合 10年ウィンブルドン選手権1回戦のJ・イスナー(米国)―N・マユ(フランス)戦で、2度の日没中断を挟み3日間で計11時間5分行われた。イスナーが3―2(6―4、3―6、6―7、7―6、70―68)で勝利。イスナーがこの試合で決めたサービスエース113本は、1試合の歴代最多。

 ◆22日のテニス放送 8時50分~、16時45分~WOWOWライブで男女シングルス準々決勝を生放送。WOWOWメンバーズオンデマンドでも配信。詳細はこちら

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