堀江翔太、世界に見せたい日本の力…史上初W杯8強へ「5つの絶対条件」

スポーツ報知
日本代表が悲願の8強入りを実現するための「絶対条件」を挙げた堀江

 アジア初開催となるラグビーW杯日本大会の開幕まで20日で、あと7か月に迫った。スポーツ報知ではW杯を応援する企画「ラグビー報知」をキックオフ。初回は、日本代表フッカーで15年W杯代表メンバーの堀江翔太(33)=パナソニック=が、史上初の8強進出に日本が近づくための「5つの絶対条件」を熱く語った。

(構成=小河原 俊哉、大和田 佳世)

 僕ら日本代表の8強への道って(ドラマ)「下町ロケット」みたいなもんかな。日本協会や監督が図面を描いて、選手やらコーチという部品を集めて、みんなでさまざまなアイデアをひねり出して、でかいロケットを建造している。前回2015年大会【注1】は、W杯2度優勝の南アフリカ代表という分厚い“大気圏”は突破した。けど8強入りという“月面着陸”はできんかった。15年を超えるロケットの打ち上げ方を、僕なりに考えてみました。

 〈1〉メイド・イン・ジャパン

 物作り大国ニッポンらしい「高性能、高品質」のラグビーを目指す。15年大会のエディー・ジャパンは、徹底してボールを保持し続け、ミスや反則を誘って、相手が疲れたら反撃に転じるド根性のラグビーで3勝した。

 今のジェイミー・ジャパンはキック戦術を多用し臨機応変に攻めるスタイル。簡単に言えば視野の広い、細かく賢いラグビーを目指している。その分、運動量はエディー・ジャパンよりも多くなるし、ジェイミーの描く戦術を全うするためにはタックルやパス、キックの一つひとつに精度が求められる。より精度の高いスキルを持つことが日本のカラー。なので、常にメイド・イン・ジャパンの精神で取り組んでいきます。

 〈2〉経験値の底上げ

 日本代表の強化で4年前と大きく違うのが、サンウルブズのスーパーラグビー【SR、注2】への参戦。以前は海外勢との試合って、テストマッチぐらいしかなかった。SRにはニュージーランド、オーストラリアの代表選手がゴロゴロおって、ホント、値段のつけられんプライスレスな経験をみんなできた。海外勢への弱気な部分みたいなもんもなくなったと思う。今年で4季目のサンウルブズだけど、初年度は人が全然、集まんなくて。寄せ集めのチームぶりを当時は「泥舟」って言ったけど、見違えるように変わった。目標の勝利数をよく聞かれる。けど、そんな甘いもんじゃないですって。今季はW杯ロケット打ち上げの試験場だと思って応援してください(笑い)。

 〈3〉最後の課題克服

 最後の課題はディフェンスでしょう。相手が嫌がるキックを増やせば、ボールを取られるリスクも高くなる。となると、ディフェンスが大事になってきます。体がでかく突破力のある外国人に対し、僕らちっさい日本人は1対1ではキツい。どんだけ2対1の状況をつくって止められるか。FW陣の意識としては、そうしないと勝てないと肌で感じているのが正直なところ。アタック力に関しては十分あるし、さらにクオリティーを高めていくだけ。ディフェンスは課題が分かってるので、残り7か月、しっかり伸ばしていけばいい。

 〈4〉日の丸を背負う

 僕が初めて出たW杯は1分け3敗で終わった11年大会。先輩方にはホント、申し訳ないけど、国際試合の延長線上って感じで出て、普通に行って普通に帰ってきてね。成田空港に取材に来るメディアもスポーツ紙ぐらいしかおらんかったかな(笑い)。

 初めて日の丸の重みを感じたのがやはり15年大会。人生、変わったと感じましたよ。11年大会を経験している身としては「誰もテレビなんか見てへんやろ」「ラグビーが人気出るはずない」って思っていた。トップリーグの熊谷での試合も観客300人が普通だったし。後になって南ア戦の後のサモア戦の中継は国内で2500万人も視聴していたと聞いて、のけぞりましたよ。W杯日本大会のキャンペーンには「4年に一度じゃない、一生に一度だ」ってあるけど、これって本当だと思う。桜のジャージーに袖を通し、しっかり日の丸を背負って戦いたいですね。

 〈5〉ファンの声援

 まさにロケットの燃料になるのがファンの声援ですよ。最後の一歩が動くか動かんかって部分に絶対関わってくる。ブライトンでの南ア戦の時もノーサイド寸前に選択したスクラムは声援があったからこそ。僕らの勇気になったし、勇気を持って判断できた。露骨に言えば日本びいきの応援をしてくれるのが一番。他の国をブーイングではなく、「日本代表、頑張ってくれ!」でいいんです。

 来年の東京五輪につなげる使命も背負っていると思う。もし、つまずいたら、東京五輪、盛り上がらへんやないかってなってしまいますからね。大会運営含め日本全国、端から端までメイド・イン・ジャパンのW杯にして、そして世界に見せたい。「日本人できるんやぞ、日本、すごいんやぞ」って。

 【注1】15年W杯イングランド大会1次リーグ初戦で日本はW杯2度優勝の南アフリカに34―32で勝利。29―32で迎えた後半のラストプレーで、相手のペナルティーで獲得したゴール5メートル前で日本は勝利にこだわりスクラムを選択した。ペナルティーキックを選んでも同点だったが、4分を超える攻防の末トライで逆転。「スポーツ史上最大の番狂わせ」と報じられた。
 【注2】ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチン、日本の5か国15チームで行う南半球のリーグ戦。日本は16年から代表強化の一環でサンウルブズが参戦し、今年で4季目。代表資格のない外国選手の力も借りて、初年度に1勝し、昨季は3勝と毎年、勝ち星を増やしている。

 ◆堀江 翔太(ほりえ・しょうた)1986年1月21日、大阪府生まれ。33歳。大阪・島本高―帝京大卒。2008年に三洋電機(現パナソニック)に入団し、日本選手権2連覇、15年度のトップリーグ3連覇に貢献。09年に日本代表初招集、通算58キャップ。W杯は11、15年に出場。16年に日本代表、SRサンウルブズの主将を兼務した。180センチ、105キロ。家族は妻と2女。

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