リナレス、ロマチェンコからプロ初ダウン奪うもTKO負け…ボクシング史に残る大激闘

スポーツ報知

◆WBA世界ライト級タイトルマッチ ○ワシル・ロマチェンコ(10回2分8秒 TKO)ホルヘ・リナレス●(12日、米ニューヨーク、マディソン・スクエア・ガーデン)

 世界3階級制覇王者ホルヘ・リナレス(32)=帝拳=が、WBA世界ライト級王座4度目の防衛に失敗した。五輪2連覇し、世界最速7戦目で2階級制覇したワシル・ロマチェンコ(30)=ウクライナ=に10回2分8秒TKO負け。挑戦者にプロ初ダウンを与えるなど互角の戦いを演じ、歴史的ビッグマッチにふさわしい戦いを見せた。戦績はリナレスが44勝(27KO)4敗。ロマチェンコは11勝(9KO)1敗。

 リナレスが狙いを定めた。6回。不用意に近づいてきた一瞬の間を逃さず、右ストレートをたたき込んだ。ロマチェンコにとってはプロ初のダウン。自慢の高速パンチで尻もちをつかせた。しかし、10回に左アッパーを受けると、最後は左ボディーで膝から崩れ、そのまま立ち上がれなかった。

 10回TKO負け。「最後のパンチは異常に効いた。両者とも力を出し切った」。全身全霊を懸けた戦いは、9回までの採点が85―85、86―84、84―86と三者三様の互角。直近4試合で相手を棄権に追い込んできたロマチェンコに対し、最後まで立ち向かった。

 母国・ベネズエラで天才少年と呼ばれた。ビッグマッチのチャンスをつかむため、17歳で単身来日。最初に紹介された部屋は和式便所だった。言葉も分からぬまま、大雪の中でやっとの思いで洋式を購入。技を磨き、心のたくましさも増した。今は滑らかな日本語を操り、減量期には脂の少ない和食で調整するなど、身も心も日本に浸っている。この日、たどり着いた聖地での大舞台。試合を見守った帝拳ジム・本田明彦会長(70)は「体の差を生かして戦えた。全体的に見たらよくやった」と、ねぎらった。

 アマ時代396勝1敗を誇り、全階級通じて最強選手の一人に挙げられる五輪覇者と善戦。会見では早くも再戦への質問も飛んだ。「ロマチェンコはバランスが良く、スピードがあった。チャンスがあれば再戦したい」。潔く勝者をたたえ、再起へ立ち上がる。

 ◆ワシル・ロマチェンコ 1988年2月17日、ウクライナ・ビルホロド・ドニストロフスキー出身。30歳。2008年北京五輪フェザー級、12年ロンドン五輪ライト級で金メダル。アマ戦績396勝1敗。13年10月にプロデビュー。14年6月に3戦目でセンサク(タイ)と並ぶ世界最速でWBO世界フェザー級王座を獲得。16年6月にWBO世界スーパーフェザー級王座を獲得し、世界最速7戦目で2階級制覇。身長170センチの左ボクサーファイター。

 ◆ホルヘ・リナレス 1985年8月22日、ベネズエラ・バリナス生まれ。32歳。帝拳ジムと契約した2002年に初来日し、同年12月に日本でプロデビュー。07年7月にWBC世界フェザー級王座(防衛1回)、08年11月にWBA世界スーパーフェザー級王座(防衛1回)、14年12月にWBC世界ライト級王座(防衛3回)を獲得し3階級制覇。16年9月にWBA世界同級王座(防衛3回)を獲得し王座統一。身長173センチの右ボクサーファイター。

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