山中慎介氏&岩佐亮佑対談…パート3 「いつまで防衛してんだよ!」試合後に岩佐が抱いた嫉妬心
◆報知新聞社後援 プロボクシング世界戦 ▽IBF世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)タイトルマッチ12回戦 岩佐亮佑―TJ・ドヘニー(16日、東京・後楽園ホール)
IBF世界スーパーバンタム級王者・岩佐亮佑(28)=セレス=が、16日に同級1位TJ・ドヘニー(31)=アイルランド=との2度目の防衛戦(報知新聞社後援)に臨む。試合を前に日本テレビの企画で、2011年日本バンタム級タイトルマッチで敗れた元WBC世界同級王者・山中慎介氏(35)と対談。収録のもようは、15日午後11時からの日本テレビ系「NEWS ZERO」内で放送される。スポーツ報知では、4回に渡って対談のもようをネット配信する。
―日本タイトルマッチ後、山中さんは岩佐選手をどう見ていた
山中氏(以下、山)「もちろん、戦っている相手なので、僕が世界タイトル取った後も必ず(世界を)取れると思っていたし、取ってほしかった。日本チャンピオンになって防衛戦でも十分強さを証明してた。いつ世界挑戦してもいいってところまで行っていたけど、なかなかやっぱりタイミングも合わずに決まらなかった、たぶん本人もモヤモヤしたところもあったし、結局、世界戦が敵地で決まった。当たり前のように取ってくれると思っていたけど、本来の動きではなかったので負けた。そこから勝ちはしてるけど、なんでしょうね、内容も僕は悪いとは思わないんですけど、もう一つインパクトを与えられてないのかなっていうのは少しはあったと思うんですけど。なので本当に僕に負けてからもちろん日本チャンピオン取って、東洋取りましたけど、目標は世界だったし、つらい時期だったなっていうのは僕もずっと気にはしてました。とはいえ僕も現役ですし、チャンピオンでいさせてもらってたので、だからそういう話はできなかったけど、ずっと気にはしてましたね。試合も結構、後楽園で日本チャンピオンとの防衛戦もよく見に行ってましたし、(世界)取った時は本当にうれしかったですね」
―岩佐選手は終わってからの山中氏の姿は
岩佐(以下、岩)「え~っと、まず、僕が負けて、山中さんが世界取ったじゃないですか。防衛を2回、3回と重ねていった時は『あっ、俺はこんな強い人と戦えていい試合をできたんだな』っていうちょっとした自信になっていたんですけど、それ以降は嫉妬が多かったですね。『ああ、勝っていたら俺ここにいられたのかな』とか、『いつまで防衛すんだよ』みたいな(笑い)同じ階級だったし『いつまで?』って。6回、7回目くらいから『いつまで防衛してんだよ』っていう。本当に嫉妬心というのが強かったですね」
山「途中まで(同じ)バンタム級やったもんね」
岩「試合はできないし、負けないし、(王座の)席は空かないし。そんな気持ちを持っちゃいけないっていうのもあるんですけど、なんかボクサーとしていち現役だったので、嫉妬がどんどん強くなった思いはあったんですけど。僕が英国(15年6月の世界戦)で負けた後ですかね。もう階級上げようとなった時に、その嫉妬心がなくなって。もう山中さんに防衛記録をつくってほしいって気持ちに変わったというか。やっぱり戦う可能性がなくなったので、逆に普通に応援してたような気持ちがありますね」
山「それまでは『打倒・山中』ということだったの?」
岩「『打倒・山中さん』でしたね(笑い)。再戦をずっと言ってましたしね」
山「僕は正直やりたくなかったんですよ。現役時代はあまり言わなかったんですけど、もう再戦は1回勝ってるし、もういいかなっていうのはあったんですよ。でも、階級変えてくれた時は素直に応援する気持ちでしたね(笑い)本当に現役同士ならバンタム級でいつ戦う可能性があるのかわからないというのがあるじゃないですか。(帝拳ジムの)本田(明彦)会長もたまにチラチラそういう話をしてたので、あるのかなって。でもお互い刺激し合って、岩佐君が取ってくれて本当にうれしかったですね」
―山中氏が引退して岩佐選手に伝えたいことは
山「まあ、1度は防衛しましたけど、とはいえこれからどんどん防衛に挑戦していって回数を重ねてほしいし。まだ言っても28歳。それは本当に羨ましいなって思うし、絶対、体は動けるんですよ。ダメージはそんなにたまっているようには思えないし。防衛回数にこだわりっていうのは?」
岩「あります!」
山「そこを目指してるっていうのは、はっきりと本人の口から聞いたので、余計に防衛回数を重ねてほしいなって応援したくなる。僕もそうだったように、防衛戦ごとに一試合、一試合キャリアが生きて、精神的にも強くなれた気がするから。やっぱりイマイチな試合って、12回の防衛の中でも結構あったから、そういう経験をしてさらに強くなれてるなって思うようになった。前の試合も納得いってないのであれば、それが次の試合でも生きていくから。スーパーバンタムですけど、何よりも日本タイトルで戦った人間が活躍しているっていうのはうれしいことですから。もっともっと活躍してもらって『まあ、俺は岩佐君に勝ったけどね』っていうのを言いたいですね(笑い)『昔勝ったけどね』っていうのをね」
岩「やっぱり戦った選手であり、同じサウスポーであり、もう階級は違うけど、同じバンタムという文字があるので、その中でもやっぱり尊敬するボクサーなので、その方にそういってもらえて、同じ僕も防衛記録を狙いたいという風に思っている。やっぱり山中さんがそういう記録にあと一歩だったというのはすごく大きいです。その試合があったからこそ、本当の強さって僕はそっちだって思ったので、僕もどこまでいけるか、本当にやっていきたいって思ったんですよ。山中さんの試合を見て。なのでその方にそう言ってもらえて本当に励みになりますし、何よりも山中さんのように人に愛されるボクサーになりたいので、それが目標です」
◆日本バンタム級タイトルマッチVTR(11年3月5日、東京・後楽園ホール)当時8戦全勝でランク1位の指名挑戦者・岩佐と初防衛に挑む王者・山中の無敗対決。序盤は岩佐がリードし、2回に左ショートで山中をぐらつかせたが、冷静な王者は中盤から左ボディーを軸に主導権を握る。自慢の左で再三好打し、最終10回にロープ際に追い込んで一気に7連打。最後は山中の左ストレートが顔面を捉え、レフェリーストップでTKO勝ち。