成松、メダル確定も大流血 金メダルなら60年ぶり快挙も「正直ムリ。この傷では…」

スポーツ報知

◆ジャカルタ・アジア大会 ボクシング ▽男子ライトウエルター級準々決勝 ○成松大介(負傷判定2回45秒)アールエジレジ●(29日)

 顔をゆがめながらリングを下りた。成松はカットした右側頭部をタオルで押さえながら引き揚げてきた。拭き取りきれない血がこびりついた顔で開口一番「大丈夫じゃないです」。メダル確定には「そこだけはひと安心」と、痛みをこらえつつ本音を漏らした。

 172センチの成松より身長で3センチ上回るイラク選手に対し優位に試合を進めた。フットワークを使った27日の初戦(2回戦)とは逆に、距離を詰めてボディーを効果的にたたき込んだ。2Rも得意の左ストレートをさく裂させたが、開始45秒で偶然のバッティング。右側頭部からおびただしく流血し、試合を止められた。

 この階級で金メダルなら、1958年東京大会の川上林成(しげまさ)以来60年ぶり。快挙への挑戦権を得たが、「正直これはムリです。この傷では…。次の試合できるかどうかさえちょっと分からない。あまりにも血が出ているので」と、31日の準決勝出場には厳しい見通しを明かした。セコンドについた自衛隊体育学校の本博国(もと・ひろくに)コーチ(48)は「後はドクターの判断。1日空いているから何とかうまく止血して、次も戦いたい」と祈るように話した。

 リオ五輪にはライト級で出場し、2回戦まで進んだサウスポーの実力派。大会前には、15年に自身に対して配られた助成金を日本ボクシング連盟が不正に流用した問題などが発覚し、山根明前会長(78)が辞任した。騒動払拭(ふっしょく)の快進撃にふりかかった不運。「試合ができるなら、勝ちにいきます」と執念をのぞかせ、控室へ消えた。(太田 倫)

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