斉藤裕太、“呪われたバンタム”の新王者に…見せたかった天国の親戚が生きた証し…

スポーツ報知
2回、斉藤裕太が菊地永太を果敢に攻め、TKOでチャンピオンに登りつめた

◆ボクシング 報知新聞社後援ダイナミックグローブ(1日、後楽園ホール)

 日本バンタム級王座決定戦が行われ、同級2位・斉藤裕太(30)=花形=が新王者に輝いた。同級3位・菊地永太(32)=真正=に2回2分33秒でTKO勝ち。選手の体調不良などを理由に3試合連続で開催できず、“呪われたバンタム”とささやかれたタイトルだったが、一度は引退を決意した斉藤が8か月空位の続いた王座を手にした。斉藤の戦績は11勝(8KO)9敗3分け、菊地は20勝(8KO)6敗4分け。

 斉藤は返しの左フックなど、相手の打ち終わりに的確なパンチを浴びせた。ガードの隙間からアッパーをたたき込み、最後はラッシュで2回TKO勝ちだ。2012年に全日本新人王スーパーフライ級を制してMVP。将来を期待されながら、9敗で足踏みが続き「本当にきつかった。すぐに日本王者になれるというバカみたいな考えだった。心が折れかけたけど、勝てば報われると思った」。3人の息子をリングに上げて喜びを分かち合った。

 2月に連敗して一度は引退を決意。しかし、王座決定戦のチャンスが舞い込み「神様がくれた機会。運を持っている」と6月の王座決定戦に向けて4月に練習再開。再起戦は相手の体調不良で中止になったが「中止は悔しかったけど、もっと練習できるプラスに考えた」と前向きだった。

 「私情ですみません。記事を書いてもらえれば、その人の存在を示せると思って」と試合後に自ら語り出したのは、亡くなった親戚への思いだった。叔母の夫である小山内淳(じゅん)さんが5月に多発性骨髄腫で死去。元々は美容師で、髪を切ってもらっていた斉藤は病室で励ましながら「チャンピオンになるから」と誓っていた。

 後楽園ホールに近い病院で闘病していたため、淳さんは「試合は見に行くからな」と約束してくれたが、願いはかなわず。勝利後は次男・寛太くん(4)に淳さんの遺影を持たせ「淳ちゃんにありがとうと言いたいです! 応援してくれる人は宝物!」と1425人の観衆にアピールした。

 同級では、昨年8月以来の日本タイトルを懸けた試合を勝利で飾り“呪い”を打破。花形進会長は「我慢して長くやればチャンスが来るんだよ。諦めてたら今はねぇんだよ」と笑った。初防衛戦は年内に同級1位・鈴木悠介(三迫)を迎える。斉藤は「サウスポーはちょっと苦手なんですけどね。このベルトは簡単に渡すつもりはない」。生きられなかった人を思い、勝利を刻み続ける。

スポーツ

×