井上拓真、日本初の兄弟4団体制覇へ12・30トリプル世界戦
WBA世界バンタム級王者・井上尚弥(25)=大橋=の弟でWBC世界同級4位の拓真が、日本初の兄弟4団体統一を狙う。
12月30日に東京・大田区総合体育館で同級2位ペッチ・CPフレッシュマートとの暫定王座決定戦を発表。WBO世界スーパーフェザー級王者・伊藤雅雪が同級1位エフゲニー・シュプラコフと初防衛戦、WBC世界ライトフライ級王者・拳四朗が同級8位サウル・フアレスと5度目の防衛戦を行い、トリプル世界戦となる。
井上兄弟の悲願をかなえる時が来た。拓真は2016年末にも世界初挑戦の機会があったが、練習中の右拳負傷で直前に辞退。「世界王者になることが小さい頃からの目標。兄弟王者はさらに大きな夢。夢をかなえるためにも勝ちに徹したい」。兄・尚弥にも「やっと決まったな」と肩を叩かれ、国内2組目の兄弟世界王者への覚悟が決まった。
WBA同級王者の尚弥は、3月頃に他団体王者らとトーナメント方式で争う「ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)」の準決勝を予定。WBOとIBFの王者が出場中で、優勝すれば3団体統一となる。拓真がWBC王者になれば、日本初となる兄弟4団体統一の快挙。「前は兄弟で同じ階級になると思わなかった。これも運命なのかな」とベルト総取りを狙う。
映像を猛研究 兄の“サウスポー斬り”を参考にしている。尚弥は10月のWBSS初戦でサウスポーのパヤノ(ドミニカ共和国)に70秒の衝撃KO勝ち。相手の右手に対して自分の左手を高く構え、背中側からパンチが来ると意識させると、すかさず逆の内側からの左ジャブ。死角を作り、右ストレートで一撃だ。映像を何度も見返した拓真は「ナオ(尚弥)ほど当て勘はないので、仕留められるかは別」としながらも、「あそこで駆け引きして、相手も『パンチが見えなかった』と話していた。(自分も)できないことはない」と、サウスポーのペッチ対策を進める。
WBCは現在空位で、1位ウーバーリ(フランス)と3位ウォーレン(米国)が12月に王座決定戦を予定しているが、交渉が難航中。破談になれば、拓真の試合が暫定から正規王座に昇格する。「昇格した方がモチベーションになる。兄を追い越すのはほど遠いけど、世界王者になって徐々に追いつければ」。怪物の弟が殻を破る。(浜田 洋平)
◆拳四朗、V5戦へ予習なし
V5戦へ、まさかの予習なしで会見場に現れた。通常は対戦が決まった時点で情報を得るが「相手を知らずに来た」と、会場に入るや否や報道陣用の資料で相手を確認。「初めて見た選手。ニックネームが『ベビー』になってるけど、“ベビー度”は僕が勝っている」と童顔対決でも自信満々だ。「KOを続けて、統一戦があればそれを受けてベルトを増やしたい」と先を見据えた。
◆伊藤、初防衛へ「楽しみ」
年末興行は16年大みそかに前座で出場したが、今回はメインの大役だ。例年は地元の東京・江東区の自宅や飲食店で友人とテレビ観戦していた舞台に「憧れていた。自分の試合を早く見たい。どう映るか楽しみ」と笑顔を見せた。11日から恒例の米国合宿に出発し、12月17日に帰国予定。7月に日本人では37年ぶりに米国で王座を奪い「日本中にインパクトを与えてやりたい」と初防衛を狙う。
<井上兄弟の目指す記録>
▼兄弟4団体統一 ヘビー級のビタリ&ウラジミールのクリチコ兄弟(ウクライナ)が史上初。兄・ビタリがWBC、弟・ウラジミールが11年にWBA、WBO、IBFの3団体統一王者となり、同時期に同一階級で4団体の王座を保有した。
▼兄弟世界王者 世界では過去30組ある。国内では亀田興毅、大毅、和毅の3兄弟以来2組目。亀田家で同時期に王座を保有したのは、興毅と大毅が10年2月から3月まで、同12月から11年1月までの2度。興毅と和毅は13年8月から、同9月に大毅が加わり、同12月に興毅が返上するまで3兄弟同時保有。14年3月まで大毅と和毅が保有。