【井上尚弥手記】これからは王者として拓真の色と道を作っていけ

2018年12月31日8時10分  スポーツ報知
  • 大会で優勝した井上兄弟(右から長男・尚弥、次男・拓真)

 ◆報知新聞社後援◇プロボクシング▽トリプル世界戦 WBC世界バンタム級(53・5キロ以下)暫定王座決定戦12回戦 ○同級5位・井上拓真(12回判定)同級2位ペッチ・CPフレッシュマート(本名はタサーナ・サラパット)●(30日、東京・大田区総合体育館)

 井上拓真(23)が世界初挑戦で暫定王座を奪取。世界3階級制覇を果たしたWBA世界バンタム級王者の兄・尚弥(25)=ともに大橋=が、スポーツ報知に手記を寄せた。自身の影を追いながら悲願をかなえた弟への思いを明かし、王者として独自の道を歩む願いを込めた。

 素直にうれしい。内容は良くなかったけど、勝つことが大事。世界を取るか、取らないかで人生が変わる。ただし、まだ暫定王座。浮かれてはいられないし、正規王座を取ったら本当に喜べる。課題はこれから克服すればいい。僕はあと2勝して、バンタム級のベルトをがさっと奪いにいく。

 拓真と2人でスパーリングをすると、お互い感情的になって止まらないから練習にならない。負けたくないし、殴られたらイラッとする。それは他の選手に殴られるのとは違う。僕の癖を分かっているから、そこを突かれるとムカつく。でも、リングを降りたらいつもの感じに戻る。最後にやったのは自分が20歳くらいの時かな。練習にならないし、お父さんが兄弟で殴り合うのを見たくないらしい。

 拓真は周りから「尚弥の弟」として見られてきた。口には出さないけど、これだけ言われて気にしないわけがない。だから拓真も僕以上のパフォーマンスをしたいと絶対に思っているだろうし、比べられることも分かっている。でも、気にしすぎる性格ではないのでちょうど良かったんじゃないかな。その性格は強み。口に出さないのは性格と今の家族、兄弟の関係がいいから。僕に対して嫉妬もないし、お互い尊敬し合っている。

 拓真に対して「ここは勝てない」とか思ったことはない。拓真を突き放す気持ちでやっているし、突き放してもついてくると分かっている。ダッシュ一つでも負けたくないという気持ちでやってきた。20年、一緒にボクシングをやって「気を抜いたらやられるな」というのは常に感じる。小さい頃は僕が先にできた技術も、拓真は吸収が遅かった。ただ、それを努力で必死にカバーしてきた。気持ちも強いし、それがなかったらここまで来られてない。

 去年の12月30日は同じ日の試合で、拓真が1か月前から僕の家に住み込みに来た。きつい練習、減量のピークの時もずっと一緒。特別な会話はないけど、そばにいるだけで気が楽になる。兄弟でやってきたから今でも気持ちを分かり合える。他の選手にはできないこと。今の自分がいるのも、拓真との関係性が大きい。拓真と兄弟で本当に良かった。ボクシングがあるから家族に団結力がある。

 王者として、拓真には拓真の色と道がある。これからは「尚弥の弟」ではなく「井上拓真」として、自分で作っていけばいい。同じ土俵に上がってくるので、これから拓真色を作って長く王者でいてほしい。引退するまでに勝つことも、負けることもある。それでも、世界のトップの戦いをずっとやっていってほしい。もちろん、兄弟一緒にね。(WBA世界バンタム級王者)

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