【田中恒成VS田口良一 世界戦平成最後の日本人対決】<上>フライ級転向で相思相愛決戦

スポーツ報知
17年9月、V2戦で眼窩底骨折した田中(左)

◆プロボクシング▽WBO世界フライ級(50・8キロ以下)タイトルマッチ12回戦 王者・田中恒成―同級4位・田口良一(16日・岐阜メモリアルセンターで愛ドーム)

 平成の世界タイトルマッチ日本人対決は薬師寺保栄―辰吉丈一郎戦(平成6年12月)、畑山隆則―坂本博之戦(同12年10月)など過去31戦。そのラストを締めくくるWBO世界フライ級タイトルマッチを前に、スポーツ報知では連載「平成最後の日本人対決 田中VS田口」を全3回で掲載。初回は、ライトフライ級で一度白紙となった田中恒成―田口良一戦が、フライ級での実現に至った舞台裏を探った。

 3月上旬。田中が田口戦へ順調に調整する姿に、名古屋・畑中ジム会長の畑中清詞(52)は1年半前の“撤退”が正解だったと確信した。2017年夏、当時ライトフライ級WBO王者・田中とWBA王者・田口の両陣営は、水面下で年末統一戦の実施に合意。だが、中継局の決定や両団体の承認へと動き出そうとした矢先、田中が“前哨戦”の雰囲気さえあった9月のV2戦で両眼窩(か)底を骨折。試合は逆転KOで勝ったが、医師から「2か月安静」とされた。

 かねて意識していた田口戦を最初に希望した田中は、「年末に戦う」と畑中に直訴。だが、畑中は無理を許さなかった。「100%の試合をファンに見せられるのか? またけがしたらボクシング人生がジ・エンドだぞ」。田中は返す言葉がなかった。現役時代に中部地方初の世界王者だった畑中は、まな弟子が将来5階級制覇を狙える逸材だと見込むからこそ白紙とした。

 田中は「筋だけは通したい」と一人で東京・ワタナベジムを訪れ、9歳年上の田口に直接謝罪。「お互い頑張ろう」と励まされたが、責任を感じていた田中は「いつか戦ってください」とは言えなかった。

 だが、運命は再び2人を引き寄せた。田口は17年末にライトフライ級2団体王者となり、18年5月に陥落。フライ級に転向した田中は同年秋に3階級制覇を達成した。同じ頃、田口も現役続行表明。ファン待望のカードと自覚していた畑中は「田口君はどうするんですか」とワタナベジム会長・渡辺均(69)に電話を入れた。渡辺は「減量苦は限界。渡りに船だった」と明かす。昨年11月、田中はパナマでのWBO総会に出席し、フライ級に転向した田口の上位ランキング入りをバルカルセル会長らに直訴し、支持された。“相思相愛”がついに実った。

 高校4冠などアマエリート出身だが、プロでボクシング人生最大の挫折を乗り越えた田中。たたき上げで10度目の世界戦リングに立つ田口。2人は戦う運命にあったことを感じながら、決戦のリングに立つ。(田村 龍一)=敬称略=

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