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日本最速男・桐生祥秀が追求する「かけっこ」の一等賞

2018年5月24日16時0分  スポーツ報知
  • 桐生祥秀

 「かけっこ」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。あぁ、小学校の運動会でやったなぁ~と、懐かしく思い出す方も多いだろう。この「かけっこ」を本気で追求し続けた結果、日本で一番になったのが陸上男子100メートル日本記録保持者の桐生祥秀(22)=日本生命=だ。多くのトップ選手の場合、試合のことは「レース」と呼ぶが、桐生は「かけっこ」と形容することも多い。10秒17で4位だったセイコーゴールデングランプリ大阪(20日、ヤンマー)でも、試合後の感想は「かけっこは一番じゃないと悔しい」という表現だった。

 桐生の走りの原点は「一等賞をとること」だと関係者は言う。誰にも負けない姿から“ジェット気流(桐生)”のあだ名もついた。東洋大4年時の関東学生対校(17年5月)では短距離2冠を達成し「運動会みたいで楽しかった」と笑った。昨年9月に悲願の9秒台(9秒98)を達成し、日本最速は証明している。今後桐生に「かけっこで勝つ」=「強い選手と走って勝つ」気持ちがある限り、まだまだ走力は伸びるし、日本記録もさらに更新できるだろう。その意味で、今回また「かけっこ」という単語を聞けたのはうれしかった。

 日本人は、かけっこのヒーローが大好きだ。セイコーゴールデングランプリ大阪の会場も、サインや写真をおねだりする黒山の人だかりができていた。桐生自身は常日頃「注目してもらえるのはうれしいし、盛り上がった方が楽しい」というタイプ。大きな注目を浴びつつ、社会人アスリートとして競技に専念できる今の環境は理想的だ。今季に入ってからは、100メートル初戦のダイヤモンドリーグ・上海大会(12日)を含めて、強豪選手と競り合った時に力んで走りが乱れる欠点が影を潜めている。本人が「もっと体にキレを出したい。トップスピードを速くしたい」と言うように、レース中盤に出現する最高速度を高めれば、自ずと“一等賞”もついてくる。

 今季最大の目標は、8月のアジア大会(ジャカルタ)での金メダル。100メートルの代表2枠を争う最終選考会が、6月の日本選手権(山口)だ。自己記録10秒00の山県亮太(25)=セイコー=、同10秒07の多田修平(21)=関学大=、10秒08のケンブリッジ飛鳥(24)=ナイキ=ら国内の強敵を破らないと、アジア大会の扉は開けない。日本最速の桐生が日本選手権を制し、「かけっこ日本一」を証明できるかに是非注目して欲しい。(記者コラム・細野 友司)

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