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「神の子」と「プロレスLOVE」KIDさんが見せた気遣い

2018年9月21日12時0分  スポーツ報知
  • 2006年5月3日、東京・代々木第一体育館でのHERO’Sで、山本KID徳郁は、ゴングと同時に宮田和幸へ左ヒザ蹴りを見舞い、1回4秒のKO勝ち

 「失礼になってしまうので、その質問は“なし”にしてもらっても大丈夫ですか? 」。2005年3月25日。都内のジム開業イベントで、KIDさんはそう言った。

 山本KID徳郁さんはプロレスラーの武藤敬司と一緒にイベントに参加。真っ赤なフェラーリで南青山の一角に現れた。取材していたのは、スポーツ紙と専門誌だった。「今日は何を話しましょうか? 」。KIDさんは会見前、記者数人の前に来て相談した。「足を運んでくれた」との思いがあったのだろう。

 当時、右肩を負傷していたため、翌日に行われる格闘技イベント「HERO’S」の旗揚げには出場できない状態だった。KIDさんなりに、試合に出られないならどのような話をすれば記事になるのか、記者と話しながら、考えてくれたのだと思う。レスリングから転向した宮田和幸のデビュー戦も組まれており、「どんな動きをするのか見たい」と語ってくれている。 ある記者が「武藤さんは知っていますか?」と聞いた。“神の子”と、“プロレスLOVE”武藤とのツーショットは“紙面映え”がする。2人に接点があれば、と考えたのだろう。KIDさんは申し訳なさそうに、「すいません。もちろん名前は知っていますけど、プロレスについては詳しくは知らなくて…」。プロレスの話はNGにして欲しい、と言われた。

 KIDさんと武藤の取材が始まった。武藤は人見知りすることなく、KIDさんを見て「ごついな~」と笑って握手すると、2人とも照れくさそうにしていた。取材を終え、写真撮影の時間になると、何とKIDさんも“プロレスLOVEポーズ”を決めてくれた。もちろん、記者全員がシャッターを押し続けていた。

 ある記者は「これは貴重なショットだ」と興奮気味に、デスクに電話し、「写真は絶対載せて下さい」と報告していた。相手に失礼にならないように、気を配りながら、最後は恥ずかしそうにポーズを決めたKIDさん。リング上で見せる闘争心、そして気遣い。取材で深い付き合いがあったわけではない。ただ、その戦いと同じように、印象に残る場面だった。

 ご冥福をお祈りいたします。   (記者コラム・久保 阿礼)

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