伊藤雅雪、28日世界挑戦で下馬評を覆せるか 頭に描くリング上の自分とは

スポーツ報知
練習に励む伊藤(C)NAOKI FUKUDA/WOWOW

 WBO世界スーパーフェザー級2位・伊藤雅雪(27)=伴流=が28日(日本時間29日)に米フロリダ州キシミーでWBO世界同級王座決定戦に臨む。相手はプロ5年で23戦全勝(15KO)の同級1位クリストファー・ディアス(23)=プエルトリコ=。米国で世界王座獲得なら1981年11月の三原正(三迫)以来37年ぶりだ。29日午前11時からWOWOWライブで生中継される。

 初の国外試合が世界戦となる伊藤は「オッズをつけるとしたら7対3か6・5対3・5で僕が不利」とリスキーな試合であることを認めながら、「ダラダラやるつもりはない。相手が弱ってくる後半にKOしてベルトを持ち帰る」と自信をみせている。そんな伊藤に大舞台を前にした心境や攻略イメージなどを聞いた。

 ―プロデビューから9年、26戦目(25戦23勝12KO1敗1分)での世界挑戦

 「東洋太平洋王座を取ってから、何回か防衛したら世界挑戦できるのかなと思っていたけれど、そう簡単ではありませんでしたね。そのころは自分でも世界挑戦は非現実的なイメージがありましたが、いまはとうとう決まったという感じです」

 ―これまでの25戦はすべて都内での試合。米国のリングに上がっているイメージは

 「不安はあるけれど、リングに上がれば同じかなと。ブーイングされる覚悟はあります(笑)。ただ、過去に何度もロサンゼルスでトレーニングしてきて、合間に試合も見ているので米国の会場の雰囲気は分かっています」

 ―客観的に見た「伊藤雅雪」というボクサーとは

 「パンチを芯ではもらわないので、相手にとっては意外にやりにくのではないかと思います。スピードがあって、見た目以上にパワーもあるので崩しにくいイメージなのでは…」

 ―スピード、パワー、テクニック、スタミナ、経験値など自分の戦力を10点満点で分析すると

 「そうですね…。スピード=8・5、パワー=7・5、テクニック=8、スタミナ=8、経験=7、といったところでしょうか。10をつけられるものはないけれど、全体的に8ぐらいだと思います。ただ、パンチの見切りや順応する能力、当て勘、よける勘など数字に表せない能力は高いと思っています」

 ―現在は7連勝(5KO)中。以前と何が変わった?

 「倒しに行く気持ちだと思います。それまでは勝てばいいという気持ちがあったけれど、最近はリスクを冒してでも倒さないといけないという気持ちが強いですね。お客さんの求めるものを考えるようになり、自然に手数も出るようになりました。一発で仕留めることは難しいので、手数を出して倒すボクシングをするようになりました。それが7勝5KOという結果に繋がっていると思います」

 ―技術面の変化は

 「これまではワンツーで終わる、2発しか打てないボクサーだったと思いますが、3発、4発、5発とパンチを出せるようになり、それが倒せるきっかけになっていると思います」

 ―それは約3年前からの米国合宿で身につけた?

 「ロサンゼルスでトレーニングをするようになってボクシングのスタイルが変わりました。自分から打って行かないといけない、ファイト(打ち合い)をしなければいけない、勝負に行く場面を必ず作らないといけないということを教えてもらいました」

 ―自分のボクシングで最も自信のある点は

 「スピードと運動神経だと思います。直線的なパンチに関しては僕の方が絶対に速いと思います。相手が振ってきたパンチはガードして、そこに右ストレートかアッパーを入れたいですね」

 ―目指すボクシングは?

 「遠くでも近くでも戦える、距離を操れるボクサーになりたいですね。オールマイティーで、しっかり倒せるスタイル。少しずつ近づいている実感はあります。以前は接近戦は得意ではなかったけれど、距離(バックステップ)で相手のパンチを外すとそこでいったん途切れてしまうので、スリッピングで外しながら前(至近距離)でパンチを当てていくボクシングを心がけています。それを極めればディアスにも勝てるでしょう。完成形は見えてきています」

 ―課題は

 「継続して打ち続ける力でしょうか。効かせるシーンはあるけれど、そこから5発、6発と行けたと思っても倒しきれなかったりするので、それ以降の継続力、回転力ですね。爆発力、パワーがまだ不足していると思うので、その殻を破りたいですね」

 ―ディアスはどんな印象か

 「ディフェンスの勘が良くてパンチをもらわない。それでいて一発当たったときの反応が優れている。5発、6発、7発とサンドバッグを叩くみたいに手が出ますね。そういう部分は井上選手(井上尚弥/WBA世界バンタム級王者)とダブる部分があります。当て勘もよく、世界チャンピオン級の選手だと思います」

 ―弱点は

 「穴はあります。例えばディフェンスがワンパターンであるとか。守るときにガードをして固まることがあるので、接近戦はあまり得意ではないのかなと。それに、相手のパンチすべてに左フックのカウンターを合わせようとするので、そのあたりにチャンスがあるのかなと思います」

 ―理想的な展開は

 「前半で倒そうとは思っていないので、当たって倒れてくれたらいいけれど、なかなか世界戦のレベルではないことなので、しっかり当てていって後半になって相手が弱ってきたところで倒したいですね」

 ―長丁場をイメージ?

 「7ラウンドから10ラウンドの間ぐらいでディアスを下がらせればこっちの勝ちだと思っています。最終的には相手がイヤな顔をして下がっているイメージがあります」

 ―逆に避けたいパターン

 「嵐のような連打に巻き込まれたら、僕もぐちゃぐちゃになって余計なパンチをもらって熱くなってしまうので、それは避けたいですね。あとは交差するシーンが怖いですね。ディアスは左フックの当て勘がいいので。全ラウンドを通して左フックには気をつけます」

 ―客観的にみたオッズ(賭け率)は

 「ディアスが7、僕が3といったところ、いや6・5対3・5かな。それぐらい難しい試合だと思います。不利のなかで戦うことは覚悟の上ですが、それでも僕はいけると思っています。僕は“持っている”のでやっちゃうかなと。自信はあります」

 ―試合にかける意気込みと自信を

 「勝てば人生が180度変わるので、これまでで最強の自分を作り上げているところです。僕は動じるタイプではないので、土壇場になればやりきれる自信はあります。相手からすべてを奪う、すべて持ってくるつもりです。どんな状況に立たされてもベルトを持ち帰る確固たる気持ち、自信があります。前半はしっかり見て、中盤でダメージを与え、後半にノックアウト! 伊藤雅雪がKOで勝ちます」

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