三宅宏実「五輪は、回数を重ねるごとに怖さが出る場所」リレーコラム

スポーツ報知
三宅宏実

 競技を始めて18年。私はやっぱり、ウェートリフティングが好きです。好きだから続けていて、その先に東京五輪があると改めて感じています。年齢とともに自分の状況は変わっていきます。ロンドンからリオの4年間は、体の準備はできているけど、ロンドンで銀メダルを取ったことで気持ちが燃え尽きて、心がついていかなかった。今は心の準備はできているけど、腰痛などもあって、体があまりついていかない。でも、この変化が面白いんです。

 例えば、時間の感じ方が違います。ロンドンからリオの時は日がたつのが遅かったけど、今はもうリオから2年たったんだと。毎日が充実している証拠だし、ウェートリフティングをもっと知りたい、完成させたいという欲望が大きい。練習内容も、以前とは大きく変わりました。体幹や股関節の使い方にまだ弱さがある。ぶれない軸をつくり、体の左右差もなくしたい。以前はバーベルを使う練習が9割でしたが、今は7割ほどを筋トレなど基礎練習に充てて、バーベルを使うのは3割ほどです。力任せにやっても限界が来る。18年たって、基礎が一番大事と感じる。奥深いですね。

 同年代の方々が、さまざまな形で活躍しているのは刺激です。ボクシングの村田諒太選手は、ロンドン五輪後にイベントでご一緒したりしましたが、発言を含めて考え方が広い。体のケアのことはどうされているのかと気になったりします。フェンシングの太田雄貴君は日本協会の会長になって、競技の普及に取り組んでいる。私も今は選手ですが、もっと勉強してウェートリフティング界を変えないとな、と思い始めています。

 五輪は、回数を重ねるごとに怖さが出る場所だと思います。結果を出してメダルを取りたい、でも結果が出なければ4年分の努力が水の泡になってしまう。出れば出るほど、そういう難しさを感じます。金メダルを取りたいと思うのは簡単だし、誰でも自由。でも、今日頑張ったから明日金メダルが取れるわけではない。毎日少しずつ準備し、腰も治すことで記録は伸びると信じています。

 ◆三宅 宏実(みやけ・ひろみ)1985年11月18日、埼玉・新座市生まれ。32歳。初出場の2004年アテネ五輪女子48キロ級9位。12年ロンドン同級で銀、16年リオ五輪同級で銅。父・義行さんは68年メキシコ市五輪フェザー級銅、伯父・義信さんは64年東京、メキシコ市両五輪でフェザー級金。147センチ。

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