川内優輝の“原点”ニューカレドニアマラソン「来年こそ大会新」

スポーツ報知
優勝した川内優輝

 ニューカレドニア・モービル国際マラソン(26日)の優勝から一夜明け、公務員ランナーの川内優輝(31)=埼玉県庁=が練習を再開した。9月2日の稚内マラソンへ向け、早朝に約1時間ランニング。地元紙には「雨中のレース、川内が制す」と大々的に取り上げられ「ここまで海外で大きく扱ってくれることも珍しい。うれしいですね」と笑顔を見せた。

 10年ぶりの参戦だった。2008年の日本学生ハーフで6位に。1、2位にニューカレドニアマラソン出場権が与えられるが、上位5人全員が各大学の夏合宿のために辞退し、川内まで権利が巡ってきた。「箱根常連校ではなかったので、チームメートに夏合宿の不在を承諾してもらい、出場しました。初めてパスポートを取って、初めての海外レース。当時から旅行は好きでしたが、この大会に出て『海外レースってこんなに楽しいんだ』って思えたからこそ今のスタイルがあります」。レースではハーフの部で優勝し、初めてのドーピング検査も受けた。そんな思い入れのある“初めて尽くし”の大会。ボストンマラソン優勝前から出場を決め「出るからには大会記録(2時間16分56秒)を更新したい」と意気込んでいた。

 レース当日は小雨の中、朝7時にアンリ・ミラール競馬場をスタート。弟で久喜市議会議員の鴻輝氏(25)らを置き去りに独走した。「まるで風」「クレイジー」とすれ違うランナーからの声もあり、2位に10分以上の差をつけたが、2時間18分18秒でゴール。「美しい景色の中を走るのが楽しくなってしまい、時を忘れた」と思わぬ“敵”に敗れ苦笑い。表彰式では日本人ランナーに混じって多くの海外勢から記念撮影を求められ、英語、仏語、日本語を駆使しながら一人一人に笑顔で対応した。「この雰囲気が好きなんです。大きすぎない大会で、全員の顔が見られる。みんなを大切にできますから。この気持ちは大事にしていきたい」。自らの原点とも言える大会で、来年4月のプロ転向へ心構えを再確認できた。

 10年前も大雨のレースで「ユニホームにつけたナンバーカードが溶けるほどだった」。その当時のユニホームを着用し、日誌も移動の飛行機内で熟読しイメージを膨らませた。参加記念Tシャツも持参し「(今回の参加記念Tシャツは)生地も良くなってるし、デザインもオシャレになってますね!」と大会役員と笑顔で談笑する場面もあった。気さくな人柄に選手スタッフ問わず惹かれ、「来年、リベンジに来ます!」と宣言すると大きな拍手が沸いた。

 10年前、そして今回とともに雨となったのはレースだけではない。「前回もタクシーボートで離島に行くはずが、雨で中止に。水族館で我慢しました」。この日は離島観光だけでなく、水族館も休館日。「ついてないですね…。こちらも来年、リベンジします」。一日中雨は降り続いたが、川内の笑顔には一点の曇りもなかった。

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