高藤、男子60キロ級V2 実を結んだ「孤独との闘い」

スポーツ報知
高藤直寿

◆世界柔道 第1日(20日、アゼルバイジャン・バクー)

 【20日=林直史】開幕し、男子60キロ級は高藤直寿(25)=パーク24=が2年連続3度目の優勝を飾った。準決勝ではライバルの永山竜樹(22)=東海大=を下した。日本男子で最軽量級の2連覇は、隔年開催だった1973年と75年の南喜陽以来、43年ぶり。永山は3位決定戦に勝ち、銅メダルを獲得。女子48キロ級で昨年女王の渡名喜風南(となき・ふうな、23)=パーク24=は、決勝でウクライナの新星・ダリア・ビロディドに敗れ、銀メダルだった。21日の第2日は男子66キロ級に阿部一二三(21)=日体大=、女子52キロ級に志々目愛(24)=了徳寺学園職=、阿部詩(18)=夙川学院高=が出場する。

 高藤が選んだ道が間違いでなかったことを結果で証明した。初戦から4試合を平均試合時間1分で一本勝ちすると、準決勝では序盤に左膝を痛めながら、強烈なライバル意識を持つ永山に勝利。決勝はロシア選手に優勢勝ちして3度目の世界王者に輝いたが、「優勝が近づくにつれて逃げていた部分がある。僕が求められているのは普通の優勝じゃなく、もっと圧倒的な優勝」と、喜びは控えめだった。

 大胆な挑戦を続けた1年だった。昨年の世界選手権とグランドスラム(GS)東京を制し、全柔連が新たに導入した選考方式によって今大会の代表に内定すると、長い調整期間を活用して、3月のヨーロッパオープン・プラハ大会に異例ともいえる1階級上の66キロ級で出場。「孤独との闘い」をテーマに、本来はスタッフが行う選手登録などの事務手続きまで1人でこなしながら優勝した。

孤独との闘い 昨年のGS東京では急激な体重減が響いて体がつるアクシデントを経験した。苦手な野菜を鍋の具材にして食べるなど食事を工夫し、今大会直前には都内で“減量合宿”も敢行。「年も年だし、妻や子供も2人いる。そういう部分では柔道に人生をささげていると常に思っている」。細部まで準備を怠らない姿勢を、井上康生監督も「世界一の準備をした男」と称賛する。

 16年リオ五輪で金メダルを逃した。試合直前の記憶がないほど、舞い上がっていたと自覚する。苦い敗戦から学んだのは平常心の大切さ。試合前に体を叩いて気合を入れる儀式も、「ギラギラする必要はない」と控えた。世界選手権出発当日も愛犬を散歩に連れて行くなど、普段と変わらない生活を貫いた。「本当に欲しいのは東京五輪の金メダル。僕にとってはいつもの国際大会と変わらない」。そう言い切れる精神面の充実が、2連覇につながった。

 ◆高藤 直寿(たかとう・なおひさ)1993年5月30日、栃木・下野市生まれ。25歳。6歳で柔道を始め、小学、中学、高校と世代の全国大会を制覇。神奈川・東海大相模高3年の2011年に世界ジュニア優勝。12年東海大に進学し、卒業後の16年からパーク24所属。同年リオ五輪銅メダル。世界選手権は13年大会で金、14年は銅、17年は金。160センチ。既婚。

スポーツ

×