一二三、連覇!オール一本逃すも東京金へ成長見せた

スポーツ報知

◆柔道世界選手権第2日 ▽男子66キロ級(21日、アゼルバイジャン・バクー)

 【21日=林直史】男子66キロ級で阿部一二三(21)=日体大=が2連覇を達成した。7月のグランプリ・ザグレブ大会で約1年8か月ぶりの黒星を経験。苦い敗戦を糧に、さらに成長した姿を見せつけた。直前には女子52キロ級で初出場の阿部詩(18)=兵庫・夙川学院高=が優勝。妹の活躍も刺激に変え、現地で観戦した両親に恩返しの兄妹同時優勝を果たした。

 妹に負けじと、兄も圧倒的な強さを見せた。阿部は初戦の2回戦をわずか10秒で一本勝ちすると、準決勝こそ守りを固めたリオ五輪2位の安バウル(韓国)に苦戦したが、決勝直前には妹の詩の優勝を見届け、「すごくいい刺激になった。やるしかないと覚悟が固まった」。目標だったオール一本勝ちは逃したが、決勝は1分あまりで、妹の決勝と同じ内股で一本を奪い「自分らしさが出せて良かった」と納得の笑みを浮かべた。

 昨年の世界選手権は初出場で圧巻の強さを見せて優勝した。グランドスラム東京も制して今大会の代表に内定すると、オーストリアとドイツに約3週間の単独武者修行を敢行した。言葉が通じない環境で海外の選手と積極的に交流し、ドイツ代表監督のトラウトマン氏から寝技の直接指導も受けた。洗濯や宿舎の予約なども自身で行い「きつかったけど、それ以上に得るものがたくさんあった。いつも僕たちがしてもらっていることのありがたみも改めて実感できた」と周囲への感謝の気持ちも強まった。

 一方で、試合では王者の苦しみと闘い続けた。海外勢からの徹底研究に加え、阿部が得意とする担ぎ技を警戒。腰を落として低い姿勢を取ってくる相手を攻めあぐねた。気付けば、そうした相手に「合わせてしまっていた」。7月のグランプリ・ザグレブ大会は準々決勝で敗れ、国際大会の連勝が34で途切れた。

 だが、手痛い敗戦から学んだことは大きかった。自身の好調時の映像を見返し「いい時は自分の前に出る柔道、一本を取りにいく柔道ができている。ダメな時は少し相手に合わせてしまっている」と再確認。「この負けを生かせたと言えるのは、世界選手権で優勝してから。相手に合わせず一本を取りにいく柔道を貫いていく」と腹をくくった。

 16年リオ五輪の落選を乗り越え、世界選手権を3連覇して20年東京五輪を迎えることが目標だ。名前の一二三には「一歩一歩進んでほしい」という両親の願いが込められている。17年に「一」度目、今年は「二」連覇を達成。東京開催となる来年は「三」連覇し、東京五輪へ。自ら描く金ロードを一歩ずつ進んでいく。

 ◆阿部 一二三(あべ・ひふみ)1997年8月9日、神戸市生まれ。21歳。6歳で柔道を始め、神戸生田中から神港学園高に進み、2014年に66キロ級で男子史上最年少の17歳2か月で講道館杯を制覇。日体大に進学した16年から全日本選抜体重別選手権、グランドスラム東京大会をともに2連覇。17年世界選手権は初出場で優勝。得意技は背負い投げ。168センチ。

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