川内優輝、水没ベネチアマラソンに「びっくり」膝下まで海水に漬かり激走

スポーツ報知
ヴェニスマラソンから帰国した川内優輝。イタリアの「ティラミス協会」名誉会員認定状を手に笑顔を見せた

 世界遺産「水の都」として知られるイタリア北部ベネチアで29日、悪天候のため高潮が起き、水位が通常より最大156センチ上昇、市内の約75%が浸水した。激しい風雨が発生し始めた28日に行われたベネチアマラソンには、公務員ランナー・川内優輝(31)=埼玉県庁=が参戦。ラスト3キロは膝下まで海水に漬かりながら激走したが、2時間27分43秒と自己記録から約20分遅れるタイムで7位に終わった。30日に帰国し「世界一美しいマラソン大会」の過酷さを振り返った。

 「びっくりというか、初めてでしたよ」。帰国した川内は開口一番、驚きを口にした。「レース前に2パターンのコースを説明されていました。結局、冠水で走れない部分を迂(う)回するコースを使いましたが、ラスト3キロは膝下まで水に漬かっていて…」。世界中で走り続ける公務員ランナーですら苦戦した。

 どんなレースより過酷な条件だった。今年最初のレースとなったニューイヤーズデイマラソン(1月・米マサチューセッツ州)は寒波の影響で気温が氷点下17度、8~10メートルの強風が吹く悪条件。それでも2時間18分59秒で走り、自身76度目のサブ20(2時間20分切り)を達成していた。ボストンマラソン(4月・米マサチューセッツ州)も大雨と強風で体感気温は0度を下回る中、瀬古利彦以来日本人31年ぶりとなる優勝を飾った。しかし、高潮に加え強風、大雨、冠水と次々と襲いかかる“難敵”を前にペースは上がらなかった。

 ベネチア郊外の街・ストラの宮殿「ビラ・ピサニ」をスタートし、ベネチア本島がゴール。中でもサンマルコ広場に向かう40キロ過ぎにある約170メートルの通称「マラソン橋」は、この大会のために1日だけ架けられる橋として有名だ。過去に日本人が優勝したことはなく、川内も「初めてのイタリアを楽しみにしている。(日本人)初優勝を目指します」とレース前に語っていたが、水の都は容赦なく牙をむいた。

 今年34レース目、マラソン10戦目で初めて2時間25分をオーバーしたが「貴重な経験ができた」と前を向く。レース後には大好物である「ティラミス協会」名誉会員にサプライズで認定された。「一番好きな食べ物なので、今回のレースよりうれしかった」と喜んだ一方、レースの結果が思わしくなかったため自分への“ご褒美”はティラミス1個で我慢。「有名店でも食べてみたい。来年は名誉会員として、レースでもリベンジしたい」と再挑戦に燃える。

 今後は11月の上尾シティハーフマラソン、12月の福岡国際マラソンに出場予定。ともに埼玉県出身の“後輩”にあたる設楽悠太(26)=ホンダ=との直接対決になるが「彼とはペースや目標タイムが違う。自分のペースで」と自然体。乗り越えた苦難を糧に、更なる高みを目指す。

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