【#平成】〈27〉五郎丸「エディーさんについていったらいけるんじゃないか」15年ラグビーW杯“歴史的勝利”を語る

2018年11月17日11時0分  スポーツ報知
  • 静岡・磐田市内でインタビューに応じた五郎丸歩
  • キック前のルーチンで精神集中する五郎丸歩(15年10月11日、米国戦)

 「歴史的勝利」、「世紀の番狂わせ」―。2015年9月19日、イングランドで開催されたラグビーW杯。日本は初戦で強豪、南アフリカを終了直前の逆転トライで34―32で撃破した。小説「ハリー・ポッター」シリーズの英国人作家J・K・ローリングさんがツイッターで「こんな話は書けない」とつづった劇的勝利。この大会で大活躍した五郎丸歩(32)=ヤマハ発動機=のキック前のルーチンは「五郎丸ポーズ」として注目され、流行語大賞にも選ばれた。五郎丸は「最後のW杯」と位置づけたあの時、何を思ったのか。(久保 阿礼)

 その日、五郎丸は二度、泣いた。

 試合前、君が代を歌いながら。そして、試合後、仲間と抱き合いながら。

 「それまでチーム(ヤマハ)が縮小したり、平坦な道を歩んでこなかった。その分、この試合に対する思いがあった。大会前から『このW杯を最後にしよう』と自分の中で決めていた部分がありましたし」

 9月19日、イングランド南東部にあるブライトンコミュニティー・スタジアムは、満員の2万9290人の観衆で埋まった。誰もが南アの勝利を疑っていなかった。日本は過去7回のW杯でわずか1勝。95年南ア大会ではニュージーランドに17―145と大惨敗を喫した。その後は引き分けが最高という「冬の時代」。いつしか「コンタクトプレーがあるラグビーで日本人は勝てない」と言われるようになった。

 「でも、世界と戦えないという常識を変えたかった。エディーさんの練習で身体的、精神的に成長しましたから」

 2012年4月から始動した「エディー・ジャパン」。ヘッドコーチ(HC)に就任したエディー・ジョーンズ氏(58)の父は豪州人、母は日系米国人2世。豪州や南アでHCを務め、国内でもサントリーを指揮した。誰よりも世界を知り、日本人を理解していた。

 初めてのミーティングで指揮官から目標が示された。「世界トップ10に入る。そのために、世界一のフィットネスとアタックをするチームになること。それがジャパン・ウェーだ」

 「『この人についていったら、いけるんじゃないか』と。あそこまで日本人を理解し、世界レベルを説明してくれたのはエディーさんが初めてでした」

 目標が明確になった無駄のない練習。それはかつてない経験したことのない厳しいものだった。

 「あの練習はあり得ないですね(笑い)。ただ、一つ一つの練習は1時間以内に終わりますし、目的もクリア。頭も体も疲れましたけどね」

 強豪国との対戦で少しずつ勝てる自信を積み重ねた。南ア戦を前に「善戦で十分」という声もあったが、雑音は耳に入らなかった。

 南アと一進一退の攻防を繰り広げる中、五郎丸は着実にキックで得点を重ねた。早大1年の時、来日したイングランドの名キッカー、ジョニー・ウィルキンソン氏(39)の練習を直接見ることができた。一つ一つの動作を大切にしていることに感銘を受け、五郎丸もまたキック前の「ルーチン」を確立させていた。

 「いける」と確信したのは後半32分。29―29、南アがPGでの3点を狙った。五郎丸だけではなく、チーム全体に「逃げた。勝てる」との思いが広がった。

 「南アは力強くねじ伏せて勝つ、ジャイアンみたいなイメージ(笑い)。でも、目の前の3点が欲しかった。会場内も大ブーイングでしたから」

 ロスタイム。日本はPGでの同点を狙わず、左中間でスクラムを選択。右から左へと展開した。後方から五郎丸はその景色を眺めていた。

 「ヘスケスが飛び込んだのが見えて…勝った、と」

 逆転トライ、24年ぶりのW杯2勝目。五郎丸は仲間と抱き合いながら、歓喜の涙を流していた。

 その後、日本はスコットランドに敗れ、サモア、米国に勝利。勝ち点差でベスト8は届かなかったが、五郎丸、選手の名前は広く知られるようになった。ルーチンの「五郎丸ポーズ」は15年の新語・流行語大賞にも選出された。

 「それまで何もなかったのに、ラグビー日本代表のシンボルができるきっかけになったことは大きなことだと思います。あの大会で日本のラグビー界は盛り上がったし、注目もされた。19年に向け、次の世代にバトンをしっかり渡せたかな」

 ◆ラグビーW杯 2019年日本開催

 ラグビーW杯は1987年にニュージーランドとオーストラリアの共催で初めて開かれた。

 日本はアジア初開催を目指し、04年9月に11年W杯の立候補を正式表明、ニュージーランドに決選投票で敗れたが再度立候補。09年7月の国際ラグビーボード(IRB)理事会で15年イングランド、19年日本開催が正式に決まった。

 15年大会での日本の躍進はラグビー人気向上に大きく貢献。今年10月に組織委員会が発表した大会認知度に関する調査で、昨年12月より2%増の68・3%と過去最高を記録した。

 大会は来年9~11月に国内12都市で1次リーグ40試合が行われる。日本は9月20日の開幕戦(東京スタジアム)でロシア、同28日にアイルランド(エコパ)、10月5日にサモア(豊田)、同13日にスコットランド(横浜国際)と対戦。初のベスト8進出を目指す。

 ◆五郎丸 歩(ごろうまる・あゆむ)1986年3月1日、福岡市生まれ。32歳。佐賀工から早大に進み、19歳で日本代表選出。3度の日本一に貢献する。トップリーグのヤマハで2季連続で得点王、ベストキッカー、ベストフィフティーン選出。W杯イングランド大会4試合にフル出場。1トライ、7ゴール、13PGと活躍。58得点は日本歴代最多得点を更新。大会ベストフィフティーンに選出。代表キャップ数57。

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