「太田忍はもっと強くなる」世界レスリングまさかの敗戦

スポーツ報知
太田忍

 レスリングの世界選手権を取材した。うわさには聞いていたが、ハンガリーのレスリング人気に驚いた。会場はこれまで感じたことがないほどの熱気に包まれていた。

 朝から晩まで続く鳴り物の応援と爆音ミュージックのせいで、耳がおかしくなった。記者席で巨大国旗を揺らし、自国の選手を応援するジョージアの記者の絶叫はとにかく迷惑だった。良かったことを探そう。お酒は安かった。人も優しい。ドナウ川は美しかった。

 日本勢の活躍と仕事量は比例する。海外まで来たからには、寝る間もないほどの大原稿を連日書き続けたい。と、多くの記者は思うものだ。

 男子フリースタイル65キロ級。19歳、乙黒拓斗の日本男子最年少優勝で流れをつかんだ。目の肥えたファンから、サイン攻めにあう乙黒の姿は誇らしかった。続く女子が金メダル4個で加速した。表彰式での涙は美しかった。

 最後のグレコローマンスタイル。60キロ級はリオ五輪59キロ級銀メダルの太田忍がやってくれるに違いない、と信じていた。が、まさかの2回戦負け。エースが敗れ、グレコはメダルなしに終わった。

 「何してるんだろう。情けない。勝てるだろうというおごりがあった」。試合直後は「負け」という現実をなかなか受け止められない様子だった。

 現地入りしてから調子が上がらず、焦りがあったという。チーム関係者は「アジア大会で日本唯一の金メダルを取って救ってくれたのが太田。責められない」と声をそろえた。

 日本の男子レスリングを背負っているという自負がある。敗戦後もしっかりと取材に応じた。「めちゃくちゃに書いてください。ボロクソに書いてください。その方が燃えます」。去り際の言葉に太田の逆襲を予感した。

 ◆高木 恵(たかぎ・めぐみ)北海道・士別市出身。1998年報知新聞社入社。整理部、ゴルフ担当を経て、2015年から五輪競技を担当。16年リオ五輪、18年平昌五輪を取材。

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