吉田沙保里、代表選考会の全日本選手権欠場へ…残された道は来年6月の全日本選抜出場

スポーツ報知
全日本選手権を欠場することが濃厚となった吉田沙保里

 レスリング女子で五輪3連覇の吉田沙保里(36)=至学館大職=が、2020年東京五輪の代表選考会となる全日本選手権(12月20~23日・東京体育館)への出場を回避する方向で検討していることが19日、分かった。20日が提出期限の出場登録を見送る方針。5大会連続の五輪切符獲得には来年6月の明治杯全日本選抜選手権の出場が最低条件となる。銀メダルを獲得した16年リオ五輪後は試合に出ておらず、今後は去就も含め東京への挑戦可否を決断することになる。

 霊長類最強女子が出遅れ覚悟で東京五輪への第1関門、全日本選手権出場を回避する。20日が提出期限の出場登録を見送る方針で、吉田の関係者は「本人はどうしようかと思案しているが、現時点では20年への決意も完全には固まっていない。気持ちも落ちている状況なので、まず全日本には出ないだろう」と明かした。

 13年に東京五輪招致が決まった際、吉田も東京五輪への思いはあった。4連覇を期待されたリオで涙の銀メダルに終わり、充電にあてた17年は休養状態に。今年に入り、元恩師のコーチ・栄和人氏のパワハラ問題が起き「気持ちがしぼんだ」という。関係者は「吉田も『東京は魅力。出場して皆さんに見ていただき恩返ししたい』という気持ちがある。だが、落ちた気持ちをもう一度高ぶらせるには時間もかかる」と説明した。

 東京と愛知を往復するタレント活動を行う一方で、選手兼コーチとして強化からは離れず練習は継続している。同時に後進の育成にも尽力。母校・至学館大の後輩で、同じ53キロ級の奥野春菜(19)も2年連続の世界王者に育った。

 日本協会の福田富昭会長(76)は「ワンマッチなら最強は吉田だろう。奥野ら世界王者でもフォールする力は健在だ」と評価するが、出場回避の理由の一つとして「連戦となると、今の練習量では体力への不安があるのだろう。そういう状況では全日本には出ないと思う」と指摘した。同会長は「出場意思を固めれば後輩たちの壁にもなる。人に気を使う吉田だけに、踏み出せない理由もそこにあるのだろう」と心情を代弁した。

 全日本選手権を欠場しても五輪切符獲得の道はまだ残る。来年6月の明治杯全日本選抜選手権の出場が最低条件。その後の全日本王者とのプレーオフと、19年世界選手権を勝ち上がっていけば出場権を得られる。

 出場回避で去就が問われる状況にも置かれる。関係者は「違う方向(引退)を選んだ場合は、東京には何らかの形で協力したいと考えるだろう」と話した。

 ◆東京五輪出場への条件 全日本選手権を欠場した場合、来年6月の明治杯全日本選抜選手権が最初で最後の関門となる。この大会を制し、全日本選手権王者とのプレーオフで勝って19年世界選手権の代表に入り、3位以上になれば出場権が得られる。プレーオフで負けた場合も世界選手権代表の選手が4位以下になれば、来年の全日本選手権が最終選考の場となる。

 ◆吉田 沙保里(よしだ・さおり)1982年10月5日、三重・津市生まれ。36歳。久居高―中京女大(現至学館大)卒。五輪は初出場の2004年アテネ、08年北京、12年ロンドンと3連覇し、16年リオは銀。個人種目では五輪、世界選手権の世界大会で16連覇、個人戦では206連勝を記録。12年に13大会連続で世界一となり、ギネス世界記録に認定。国民栄誉賞も授与された。紫綬褒章受章は04、08、12年。身長157センチ。

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