東晟良、連覇!「諦めず平常心」8連続得点で大逆転

スポーツ報知
東京グローブ座でフェンシングの男女各種目の決勝が行われた(代表撮影)

◆フェンシング全日本選手権 ▽女子フルーレ決勝 東14―9上野(9日・東京グローブ座)

 男女の各種目決勝が行われ、女子フルーレでは8月のジャカルタ・アジア大会の団体金メダルのメンバー・東晟良(せら、19)=日体大=が、2―6から大逆転し、最後は14―9で、今年のユース五輪優勝の上野優佳(17)=星槎国際高=を下し、大会連覇を達成した。男子エペでは16年リオ五輪代表の見延和靖(31)=ネクサス=が15年大会以来となる2度目の優勝を飾った。

 2―6のビハインドから、東が覚醒した。タイムアウトを挟んで、怒とうの8連続得点。「諦めず、平常心でいけた」と、相手の攻撃を冷静に見極めながら「突くより、突かれないことを考えた」。守備からリズムを作り、確実にポイントを重ねていった。勝利を告げるタイムアップの音とともに、1歳上の姉・莉央(りお)の元へ走り、抱きついた。喜びが爆発した。「連覇できると思っていなかった。びっくり」。激戦の女子フルーレ界で、19歳が日本のエースに名乗りをあげた。

 母・美樹さんの影響で、莉央が小学5年、晟良が小学4年の時、同時に競技を始めた。12年全国少年フェンシング大会「中学生の部」と、16年インターハイでは姉が優勝し、妹が準優勝。国内では数多くの大会で、姉妹ワンツーフィニッシュを飾り、切磋琢磨(せっさたくま)してきた。この日も今大会は16強で敗退した姉がベンチで見守り「的確なアドバイスを送ってくれた」と晟良。コートでは最大のライバルで、ベンチでは最も頼りになる大きな存在から逆転の力をもらった。

 初優勝した昨年大会から進化を遂げたのは、肉体だ。今年から日体大に入学し、ウェートトレーニングに着手。最初はフォームを固めるために、木の棒を担いでスクワットするなど地道に鍛錬し、今は50キロの重りでスクワットをこなす。下半身が強化され「コーチから『アタックのスピードが速くなった』と言われた」と、確実に磨きがかかっている。

 今大会は体育館ではなく劇場で行われ、1日1試合の今までにない試合形式だった。不慣れな環境も「緊張感のある中で、いい経験ができた」と、東京五輪の舞台をイメージできたという。2年後の本番までは600日を切り「個人と団体でメダルを取りたい」と目標も高まってきた。若きフェンサーが、ここから新たな未来を切り開いていく。(小林 玲花)

 ◆フェンシング史上初「グローブ座」決戦

 全日本選手権決勝は斬新な試みのもとに行われた。舞台となったのは東京・新宿区の劇場「東京グローブ座」。普段は演劇やミュージカルで使用される同劇場。本場英国のグローブ座を参考に、舞台を円筒形の客席が取り囲む構造だ。

 昨年就任した、男子フルーレの五輪2大会連続銀メダリストの太田雄貴会長(33)の改革の一環。昨年は駒沢体育館(約3500席)に約1500人を集めたものの、会場が大きいためどうしても空席が目立った。グローブ座の客席は約700だが、チケットは完売。女子サーブルの江村美咲(中大)は独特の雰囲気に「プチパニックになった」と表現し、男子エペの見延和靖(ネクサス)は「(ファンの)目が近い」と話したが、埋まった客席がフェンサーのモチベーションをかき立てたのは間違いない。

 大会のポスターには写真家の蜷川実花氏を起用。会場演出にはLEDをふんだんに取り入れ、大型スクリーンにはポイントや選手情報だけでなく、選手の試合中の心拍数までが数値化して映し出された。最大の目的は「集客力を高め、東京五輪の会場を満員にすること」(フェンシング協会幹部)。来年はもう一回り大きな会場を探し、予選と決勝の日程をもっと離すなど、さらに改革が進むとみられる。

 ◆女子フルーレの現状 女子フルーレは東姉妹をはじめ20歳前後の選手の層が厚く、黄金世代となっている。8月のジャカルタ・アジア大会では団体戦決勝で中国を撃破して同種目史上初の優勝。準決勝では同大会6連覇を目指した韓国を破った。アジア大会代表は晟良のほかに宮脇花綸(21)=慶大=、菊池小巻(21)=専大=、辻すみれ(19)=朝日大=。この日、晟良に敗れた上野優佳もユース五輪を制しており、レベルは高い。東京五輪では女子フルーレ団体が12年ロンドン大会以来に実施され、個人戦はその枠からの出場となるが、競争は激しくなりそうだ。

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